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【 I AM NOT OK 】ウクライナ歌手が歌う、ウクライナの「今」

I AM NOT OK

 

ロシア軍の侵攻から約一か月。

 

未だに戦争の出口が見えてこないことに胸を痛め報道を見つめる日々です。

そんな自分の生活もすっかり習慣化してしまいました。

 

けれど戦争を常態化してしまうのは非常に危険なことです。

それが当たり前になればなるほど、私たちの関心は離れ、置き去りにされる「誰か」を生んでしまうような気がする。

 

せめて感情的には常態化させないよう、心の片隅に彼らの感情や生活を残したい。

そう思い、今回はアーティストが歌う「ウクライナの今」を中心に音楽を紹介していこうと思います。

 

前回書いたユーロビジョン関連のアーティストについても多く触れていますので、

彼らの現在を心配されていた方もぜひお読みいただけたら嬉しいです。

musiccloset.hatenablog.com

 

ちなみに、国防のためか男性アーティストの更新はほとんどありませんでした。そのため今回は女性アーティストの曲が中心となっています。

こんな簡単な一文でさえ、書いていて胸が苦しくなりますが…

 

現実に起こっていることですので、曲の内容や映像など、感情を大きく揺さぶられるものが多くなっています。気持ちが不安定なときは閲覧をお控えくださいね。

 

 

KAZKA-I AM NOT OK


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ウクライナの人気バンド“ KAZKA ”(ものがたり)。

音楽はウクライナ語の独唱から始まり、彼らの特徴であるディープで繊細なポップサウンドに変化していきます。

 

報道ではウクライナの抵抗力である「精神力の強さ」ばかりに注目が集まりますが、実際はもちろん大丈夫なんかではない、という気持ちの荒廃を赤裸々に歌っています。

それでもウクライナに残り続けるのは、自分の血や民族としての命運を自身が理解しているからだという歌詞が心を揺さぶります。

これまで何百回と目にしてきた戦争を題材にしたMVでのニュース映像のカットインや空襲警報から始まるイントロ、大統領の演説などが、実際に起こり自分と時を同じくしているという事実に眩暈を起こしそうになります。

おそらく少しのメイク道具も周囲からかき集めたんじゃないかな……

 

KAZKAは2018年にリリースした「Plakala」(Cry)がヒットとし、シャザムのワールドポップカテゴリーでは3位にランクインした人気バンドです。

この曲は現在では4億以上の再生回数を誇っています。


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チャンネル登録者数100万越えの彼女たちだからこそ、多くのラジオ局や音楽番組で是非とりあげてほしい「生の音楽」です。

 

ROXOLANA-I’m gone


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前回のウクライナ国内のユーロビジョン選考記事でもとりあげたROXOLANA。

子どもたちをとりまく戦争について感情を抑えて歌う声がとても苦しく響きます。

 

Will the whole world just be watching us all die?

全員死ぬまで世界は見ているつもり?

 

It's brave new world, but it's not brave.

新しい勇敢な世界は勇敢なんかじゃなかった。

 

歌詞からも分かるように、私たち世界に対するROXOLANAの激しい怒りと落胆が伝わります。

 

ウクライナの現状を見ているとまるで自分が責められているように心が苦しくなることがあります。

なぜ止めないのか、なぜ攻撃してくれないのか、私たちは敵地に攻撃もしていないのに、世界はなぜ沈黙しているのかと。空を閉じてよと。

絶対私もこの立場だったら思う。

 

今まで言葉にすることをためらっていましたが、私たち第三者(実際は制裁を課している時点でとっくに当事者だと思うのですが)にとって、この戦争はとても気まずく、罪悪感が募るものなのだとはっきり思い知らされました。

 

Go_A -Kalyna


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タイトルのKalyna(カリーナ)とは、ウクライナにとって重要な意味をもつ植物です。

別名ゲルダローズ(Guelder Rose)、ガマズミ属に分類されます。

参考:Guelder Rose (Viburnum opulus) - Woodland Trust

 

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画像はいずれも Pixabay より

 

Kalyna (guelder-rose) is a symbol that has been a part of Ukrainian culture since ancient times. Its meanings were transferred through the ages in legends and songs.

 

A broken kalyna tree was a sign of trouble and tragedy; abuse of this tree was a shameful act. Ukrainian people carefully protected it because there was a belief that kalyna grew only next to good people.

 

According to our ancestors, kalyna has a power that brings immortality and can unite generations to fight evil.

The song “Kalyna” is a message to the World that should be united for the future of humanity.

引用元:Go_A 『Kalyna』YouTube 概要欄より

 

古代からウクライナ文化の一部だったカリーナ。

傷ついたカリーナの樹はトラブルや悲劇の兆候であったため、人々は慎重に扱ってきたようです。

またカリーナは善良な人のそばでしか育たないとも言われてきたため、人々は注意深く保護し慈しんできました。

カリーナには不死をもたらし世代を団結させて悪と戦う力が宿っていると言い伝えられており、この樹の名前を冠するこの曲にも世界の団結が訴えられています。

 

カリーナはゲルダローズとして前回紹介したオケアン・エリズィの曲でも登場していました。

musiccloset.hatenablog.com

 

2021年ユーロビジョンにて5位という好成績を残したGo_A。

現時点ではヨーロッパ全体で最も発信力のあるウクライナアーティストの一つだと言えそうです。

 

Alina Pash - Shadow of Forgotten Ancestors


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同じく前回記事でとりあげた Alina Pash。

曲は3:00~始まりますが、ぜひ冒頭の彼女のメッセージにも耳を傾けて頂きたいです。

ウクライナにルーツをもつことに彼女自身が大きな誇りを抱いていること、今の世界で起きていることをまざまざと表現しています。

“Sisters and Brothers”とカメラに向かって訴えかける彼女に対し、私たちは何を思いどう動けばいいのでしょうか。

 

Телеканал 1+1について1plus1.ua

ウクライナ国内のテレビ制作チャンネル。

戦争が始まってからは#Save Ukiraine #Stop War を全面に打ち出し各コンテンツをアップしています。

日本語でもロシア語でも記事が読めるようになっています。

 

Andriy Khlyvnyuk × The Kiffness


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ウクライナの有名バンドBoomboxのフロントマン、Andriy Khlyvnyukのアカペラを南アフリカの有名ミュージシャン The Kiffness がアレンジ。

Boomboxはロシア軍侵攻直前にアメリカツアーをキャンセルし、国防にあたることを発表していました。

動画収益はすべてウクライナ軍の人道援助に寄附されるとのこと。

 

歌われているのは、ウクライナ民謡『あぁ、草原のカリーナ(意訳)』。

ここでも前述したカリーナ(ゲルダローズ)がシンボリックな役割を果たしているのが伺えます。

こんなに素晴らしい歌声の持ち主が、今手に携えているのは銃。一刻もはやく彼らが彼らの音楽を奏でる日が近づいてほしい。

 

おわりに

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震災の被害を風化させないことと同じように、

どんなに時がかかろうと、いつかメディアが「飽き」ようと

私たち一人一人がこの戦争で傷ついた心に寄り添うこと、知ろうとし続けることが大切だと感じています。

もし、自分がその立場だったら私はそうしてほしいと思う。

忘れ去られることほど、見放されたと感じることほど、つらいことはないなと。

 

私は2014年にウクライナが出したメッセージや、2020年にベラルーシ国民が出したSOSも知ろうとしませんでした。


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2021年1月に発表されたBARLEBENの『Stop War』。

“Power wins,Power lies,Power takes away so many lives”と歌われるたび、現在の状況とまるで変わらない当時のドンバス地方の現実が浮かび上がります。

 

そして今、タリバンは約束していた女性の教育を再び禁止しました。

ミャンマーでは国軍が反体制派にまた一段と強力な弾圧を発表しています。


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日々、常に世界の問題を考えるのは難しいことかもしれませんが、

ちょっとした瞬間に思い出したり、ほんの少しだけ深く考えてみたりすることで、

私たち自身の行動や選択に何か変化をもたらすこともあるかもしれません。

 

微力にもならないとは痛感しつつ、これからも音楽紹介をとおしてそんな何かを伝えていけたらと思っています。

 

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▶そのほかの時事問題に関する音楽はこちら

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ここまでお読みいただきありがとうございました!

今後も色々な音楽を聞いてブログに書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂けたら嬉しいです!

 

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