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MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

ヨーロッパの素朴で神秘的な民族音楽

 

Mujer Medicina, Vol. 1

 

 

民族音楽って近寄りがたい?

 

民族音楽”と聞いて皆さんはどんなものをイメージしますか?

ケルト音楽やノルディック音楽(無印サウンドとか)、今は AURORA などがヒットチャートにくいこんでいますし、北欧の音色を思い浮かべる方も多いかもしれません。 

The Seed

The Seed

  • AURORA
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

また日本では早くからRPGゲーム音楽などでこれらのサウンドに慣れ親しんだ方もいるでしょう。

最近ではディズニー映画『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』で思いがけず素敵な北欧サウンドが聞けて、個人的に気分があがったものでした。 

王国でダンス

王国でダンス

  • provided courtesy of iTunes

 

私たちの生活にも身近に感じられるこれらの音楽ですが、

今ひとつその土地の風土が色濃く伝わる、その場所に根差した音楽はいまだ敬遠されているような節も見受けられます。

 

はっきりとした理由は分かりませんが

  • 宗教性(スピリチュアル性が強い)を感じる
  • 野性味が濃い
  • ポップス化、またはクラシック化できない

このような特徴をもつ音楽は、まだまだ聞き手が一瞬かまえてしまうこともあるかもしれません。

 

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今回はすでに世界的な市民権を得た(?)北欧サウンドのほかに、まだまだ素敵な“音色”をもつ神秘的な民族音楽を集めてみました。

 

頭も心も身体も、

何かとフル稼働で、心から安らげた記憶が遠く感じる日々ですが、

時には自然を近くに感じながら、人々の息遣いを感じるような音楽に身を任せてしまうのもいいかもしれません。

 

おすすめの音楽

 

民族音楽と一言で言っても種類は様々。

よりディープで実験的なもの、ポップスと融合したもの、歴史に忠実な純性のものなどたくさんあります。

今回は比較的「かまえる」ことなく聞けることを目的にしているので、ポップスあるいはフォークに近い音楽を中心にご紹介していきます。

とはいえ、その土地その土地で異なる雰囲気の曲ばかりですので、

言語やPVに頼らず、音だけを頼りにどのへんの地域の音楽なのかを想像して聞いてみるのもおもしろいかもしれません。

 

Luna Santa…スペイン語で活動するフォークデュオの新星

 


Luna Santa - Una Con La Tierra (Video Oficial)

 

ここ数か月、ほとんど毎日彼女たちの曲を聞いています。

今一番おすすめでハマっている二人組。PVもとても美しいです。

 

2020年デビューの Luna Santa。

ほとんどの情報がスペイン語オンリーなので未だ詳細が掴めないのが悔しいですが、FaceBookTwitter などをチェックすると国内ではなかなか好発進のようでした。

女性の中にある神秘性や慈愛、そして土地に根差した自然の美しさに敬意をもったナンバーが多いように感じます。

 

昨年に EP『Mujer Medicina Vol.1』をリリース。

Mujer Medicina, Vol. 1 - Single

Mujer Medicina, Vol. 1 - Single

  • Luna Santa
  • ワールド
  • ¥612

どの曲も繊細で素朴。けれど根柢にしっかりとした“意思の強さ”を感じることができ、リラックスしながらもじわじわと鋭気を養えます。

 

それにしても歌い手の二人の目力たるや。声質も私の好みに刺さりまくり。

一瞬で彼女たちの“美”のとりこになってしまいました。 オススメです。

 

Tautumeitas…ラトビア民族音楽を奏でる6人の美声

 


Tautumeitas - Raganu Nakts

 

2015年に結成されたラトビアのフォークグループバンド。

全員がボーカルをとり、それぞれバイオリン、アコーディオン、パーカッションなど楽器も担当しています。

 

2017年に同じく Auļi というラトビアの中堅フォークグループとコラボしたアルバム『Lai māsiņa rotājās! 』がきっかけで一躍注目の的に。

このアルバムはラトビア国内音楽賞のほかヨーロッパのワールドミュージックチャートでも上位にランクインするほど人気となりました。

Lai Māsiņa Rotājās!

Lai Māsiņa Rotājās!

  • Auļi un Tautumeitas
  • ワールド
  • ¥1528

 


Auļi un Tautumeitas - Dzied’ papriekšu, brāļa māsa

 

ラトビアという国は文化交流という点で、とんでもなく色々な要素が渦巻いている興味の尽きない国の一つです。

近世~現代の歴史でもはずすことができない要地で、これからも勉強を続けていきたいと思わせる深い魅力があります。(筆者は東欧贔屓なきらいもありますが)

あまりにも気になって一度訪れたことがあるのですが、その際も図書館や街並み、隣国との文化比較など、すべてにパワーを感じた印象深い国の一つでした。

 

Tulia…ユーロビジョン選出のポーランドフォークグループ

 


Tulia - Nothing Else Matters

 

2017年に結成したポーランドのフォークグループ Tulia (トゥリア)。

メンバーは

  • Dominika Siepka
  • Patrycja Nowicka
  • Tulia Biczak(グループ名は彼女の名前からとっています)
  • Joanna Sinkiewicz(健康上の問題により脱退)

この特徴的な歌声は、ブルガリアンボイスに代表される東欧全域における女声合唱形態の一つ。

喉を大きく開き地声のまま歌う発声方法で、一部では“White Voice”と呼ばれているようです(今の時代この呼称でOKなんでしょうか…)。

日本では東北にルーツをもつ姫神あたりが有名ですね。

Tuliaは2019年ユーロヴィジョンポーランド代表として選出されています。

 

そしてポーランドのPVはとにかくセンスがいい!

今回は代表曲を選びましたが、ほかの曲も音楽・色彩とともに美しいものがたくさんあって目も耳も楽しめます。 

この曲も素朴ながら、ポーランドの色彩豊かな(しかもけっこうビビッド)民族衣装が真っ白な雪にとても映えますね。

シンプルに見えて短編映画のようなカットも、何度見ても飽きません。

Burza - Single

Burza - Single

このジャケットの色味もいい感じ…♪ 

 

FAUN…歴史あるドイツのトラディショナルフォークバンド

 


FAUN - Walpurgisnacht (official video)

 

ドイツのトラディショナル・フォークロックバンド。

異教系やダークウェーブも網羅している1998年結成の中堅バンドです。

異教系と書くとビクっとされる方もいるかもしれませんが、もちろんキリスト教から見た“異教”というだけです。彼らのグループ名 FAUN も古代ギリシャラテン語における遊牧民の神“パーン神”を指しています。

ヨーロッパ各地でライブを行い認知度も高く、2010年以降はドイツ国内のアルバムチャートにもランクインするなど、名実ともにこのジャンルを牽引するバンドとなっています。

活動歴が長いためメンバーチェンジも多く、とうとう2020年には創設メンバーの一人だった Fiona Frewert(ブロンドの女性)も脱退。筆者はおおいに落胆しました…

 

トラディショナルバンドあるあるですが、各メンバーは多くの楽器に造詣が深く、曲によって担当楽器も多岐に渡ります。

このプロフェッショナルさが、筆者がトラディショナルバンドを推す理由の一つだったりします。


Faun - Karuna (unplugged 2007)

見よ、この現代人が中世音楽を演奏している」のではなく「中世人が現代にきて音楽を演奏している」ような姿を…!

生まれ変わったら彼らに奏でてもらう楽器のどれかになりたひ。無理なら後ろの植物のどれかでも可。

この四柱が奏でるサウンドはいつ聞いても至高です…。

いつかこのバンド単体で一記事書いてみたいと思います。 

 

未知のものが怖くなくなるとき

 

民族音楽やトライブコーラス、宗教音楽などを聴いていると、周囲にはよく

「ちょっと怖くない?」と言われることがあります。

(一つの文化を怖いだなんて…失礼な!)

と思うのがきっと真の音楽好きなのでしょうが、実は私この感覚、ものすご~~~く

よく分かるんです。

何を隠そう、私も最初はこの手の音楽が“怖かった”

 

小さい頃から問答無用で民族音楽が身近にあったせいで(今ではおかげと言えるけれど)、実はこれまでトラウマになった曲もたくさんありました。 

musiccloset.hatenablog.com

嫌いとか受け付けないのではなく、ただただ「かまえてしまう」んですよね。

日本では聞きなれない音色、不協和音ぶつかりまくりのカオスなコーラス、音楽自体に規律のない曲構成……

 「音楽に秩序がない」という、どこかぐちゃぐちゃに見える表情がなぜかこわかった。

 

それをどう克服(そんな大層なものじゃないけれど)したかといえば、

答えはシンプルに“慣れ”でした。

でもこれが私にとってとても大切だった。

 

最初は未知の音を「私たちと異なるもの」と感覚が身構えていたけれど、

日々どこかから聞こえてくるその音色に耳が慣れていき、だんだんと自分のなかのセンサーが「異なるもの」と認識しなくなったんですね。

 

もしかしたらこの感覚は人間関係や文化理解にもつながっているかもしれなくて、

結局人は初めてふれるものが「未知」だから、恐れたり構えてしまったりするわけですよね。

でも時が経ってそれが当たり前になってしまえば、異質だったものがいつの間にか自分の一部になり、ある種の免疫になる

そして偏見から自分を守るための「理解」という力に変わっていくような気がするんです。

 

もちろん最初からこれらのサウンドに共感し、どっぷりハマれる人は本当に素晴らしいし羨ましいな~と思います。

残念ながらそうじゃなかった私ですが、だからこそ

「異質的な濃度が低い音楽」

「異質と感じるなかにも何かおもしろさが残る音楽」

をご紹介できていたらと思います。

異質と感じる「未知」の部分が少しでも和らいでいれば、自らの経験をとおして民族音楽のディープな部分を見て(聞いて)みたくなる方は、きっと多くいるはずだと強く思うからです。

 

とはいえ音楽もブログもまだまだ勉強中の身。

さらに精進していきたいと気を引き締める今日この頃です。

 

改めてになりますが、音楽という「好き/嫌い」で判断してまったく問題ないテーマのなか、

少しでも興味をもってこのブログを読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます。

これからもレビューや考察などの音楽紹介だけでなく、そのアーティストの思いやバックグラウンド、文化や時事問題など

何かと何かの理解につながるような音楽ブログを目指していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いします。

 

思いがけず真面目な締めとなりました(笑)。 

今回もここまでお読み頂きありがとうございました!