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MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

【趣味というわりには深刻】なぜVTuberにハマったのか、ようやく言葉に出来る。

今年は私にとって圧倒的「Vtuber元年」な一年でした。

アニメ絵が元から好き(好みはあるけど抵抗は全くない)、音楽好き、声フェチ、ゲームストリームも見るようになっていた…と、これ以上この界隈にハマる要素を追加するのが難しいぐらいの好条件だったわけですが、予想通り「音楽の崖」から真っ逆さまにダイブすることになり、ブイブイ言って一年を締めくくろうとしているまでになってしまいました。

なぜここまでハマってしまったのか、ようやく落ち着いて言葉に出来そうな気がしてきたので、今回は一年の締めくくりにこの「Vtuberの世界」について、日頃から考えていること・思うことを、Vtuberの曲を交えてまとめていきたいと思います。

 

 

それで、画面に映るあなたは誰?

VTuberとは一体何なのか。まずはこの二本の動画を見てみてください。


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これはどちらも “Leag of Legends” や “Valorant” など大人気FPSゲームを輩出した【Riot Games】のオープニングセレモニーによるゲーム主題歌のパフォーマンスです。

上の動画は Madison Beer や (G)I-DLE のソヨンなど、実際のアーティスト&3Dで投影されたゲームキャラクターが共演し話題を集めました(2018年)。

一方下の動画は、ホロライブ所属のアイドルたちが全編とおしてバーチャルワールド内のライブ中継で、同じ曲をパフォーマンスしています(2023年)。

 

そもそもVtuberが何者なのかというと、簡単に言えば生身の人間の体にある種の機材を取り付け、その表情や動作がアニメーションと同期し、あたかもアニメキャラクターが動いているように見える…というカラクリになります。

つまり、生身の人間(中の人)は実際にそこで踊り歌っているので、2018年の動画でいうとゲームのキャラクターではなく、圧倒的に“Madison Beer”側に近い立ち位置の【概念】ということになります。見た目はキャラクターに振っているのに、改めて比較するとちょっとおもしろいですよね。

このカラクリを頭では理解していたものの、実際にVtuberにハマる前まで私はそれ以上に深く考えたことはありませんでした。

一体何を考えなかったのか。

前述した“Vtuberは概念である”という意味の重さです。

 

Vtuberという“概念”の意味

実際の芸能人やアーティストであれば、引退後でも別の道があり、それが具体的に何なのかは分からなくても、同じ空の下同じ人間の体で生きていくだろうことが予想されます。引退でなくとも俳優やソロデビューなど、同じ容姿・同じヒストリーを視聴者と共有していれば、その存在は地続きになり、存在自体がブツ切りになってしまうことはあまりないでしょう。

また、アニメや漫画のキャラクターの場合は、“フィクション”という完成された別世界で生き続けるということが大前提にあります。そのため例え最終回を迎えたとしても、私たちがアニメを見さえすれば、ページを開けさえすれば、いつでもその存在を確かめることができ、目には見えなくとも何らかの「つながり」を感じることが出来るかと思います。これは現実世界での「亡くなった人を思い返す気持ちのベクトル」と少し似ているかもしれません。

実際には存在はしないけれど、思い出や記憶のなかの「完結した個人」として、私たちはその存在に触れることができるのです。

 

けれど、VTuberはこの点が決定的に違います。


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これはホロライブで人気絶頂だったアイドル「桐生ココ」が卒業する際のLIVE配信です。

見てのとおり「桐生ココ」とは、

  • 実際に声を出し、ダンスをし、その個性を担っている「中の人」
  • 「側」であるアニメキャラクターを考案した描き手
  • それらをまとめて契約している会社

三者がそろってはじめて「桐生ココ」として存在することが出来ます。

私たちはその三者が生み出した「桐生ココ」を見て、その見た目(キャラクター絵)、個性、声、動きなどを感じて、はじめて「桐生ココ」を好きになります。

 

それが、卒業や会社離脱となると「側」であるキャラクター絵も契約解除となり、もちろん会社所有の「桐生ココ」という名前も手放さざるをえなくなります。

もちろん中の人がどうなるというわけではないのですが、基本的に顔出しNGとされているVTuberにとって、この事態はどんな意味を表すのか。

残酷な言い方になりますが「概念自体が消失する」。

もしくは、もう一生この「桐生ココ」という概念が更新されることはなくなるということになるのかもしれません。

ほとんどのVtuberは、脱退が決まるとアーカイブは消され(そういう契約なので仕方ないのですが)、私たちは二度とその〇〇という“概念”または“存在”と接することは出来なくなります。

 

記憶は残れど、存在は残らない。残してもらえない。

これは故人やアニメのキャラクターを思い返すことより、とても酷なことではないでしょうか。

この不思議な儚さを真剣に歌っているVtuberの歌があります。

私たちにとって、画面で見ているVTuberという存在は一体何者なのか。考えだすと思いのほか深く興味深いテーマです。


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ちなみに「中の人」の人生は当然続いていくので、ほかのVtuberになったり(転生)別の形でリアルな世界で活躍するケースもありますが、二度とその〇〇として表舞台に出ることはなくなります。

これが私がしつこいくらい、Vtuberを概念と言い続けている理由です。

 

見れば見るほど、それはリアルでしかない場所だった

“バーチャル”と聞くと未知なる別世界を想像するかもしれませんが、ことVTuberの世界は想像以上にリアルで、もっと言ってしまえば「リアルに寄り添った世界だった」というのが私の感想です。

それをしみじみと感じたのがこの曲。


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これはにじさんじ所属の元二期生である同期10名によって歌われた曲です。

この二期生は「とにかく【個性】の観点からオーディションされた枠」という期で、多様性を誇るにじさんじ内でも壊滅的に個性が強い面々が揃っています。

配信ではそれが武器になり人気の要因になることもありますが、今でも彼らの一部配信を見ると「リアルだったらどんな人間関係を築く人なんだろう…」と思ってしまうようなカオスな配信もあります。

特徴的すぎる声、一般的ではない性的嗜好、空気を読まない唯我独尊な性格…。

実際自分が生きている社会を、または学校を、会社を想像してみてください。

同僚にこんなメンバーがいたら。こんな発言をする人が隣にいたら。自分がどう思うかは置いておくとして、その場の雰囲気次第では「はみ出し者扱い」になってもおかしくない個性の人たち。


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実際にVtuberになっても悩み傷ついたメンバーはいて、卒業・脱退を考え長期間活動を休止した面々もいる期生です。

 

彼らはバーチャルという華々しく未来的な世界で活動をしていても、私たちと同じ悩みを抱え、むしろ日陰者と言われる人たちと同じ視点でその悩みと向き合っている可能性があります。

そのためか、2期生が歌う「Blessing」は何よりも私の心に響きました。

歌詞にあるように、歌の上手い下手ではなく、何に慣れているのか不慣れなのかでもなく、私はこの世界のリアルを共有しているその感性に惹かれたし、見方によってはお説教のように感じてしまう歌詞にも胸が熱くなったのです。この感情の出所をリアルと言わず、何といえばいいでしょうか。

ちなみに2期生は一人も脱退せず未だに10名全員がマイペースに活動しています(涙)

 

容姿という偏見のバカバカしさ、そして愛おしさ

よくVtuberの美点として「イメージが容姿に左右されない」ということがあげられます。個人的にこれには半分同意、半分反対という立場です。

確かにVtuberは基本的に顔出しNGなため、容姿によってオーディションされることはほとんどないようです。この「容姿に左右されずに、純粋な個性、スキル、人間性で勝負できる」というのは、人類史上最も大きく進歩した就職先の一つでしょう(笑)。

もって生まれた容姿だけでなく、何らかの事故や障がいなど本人が容姿にコンプレックスに感じていることをカバーできるというのは、とても大きな美点であることに間違いはないと思います。

 

けれど、その一方で実際に人気の出やすいVtuberは美男美女、という矛盾もあります。この動画はにじさんじのアイドルユニットChroNoiR(クロノワール)のLIVE映像です。


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おもしろいのが、この二人はアイドル志望でVtuberになってはいないということです。

元々ゲーマーズ枠(ゲームが好きor上手い)で、プロゲーマーになるかどうかぐらいのレベルを持ち、それをスキルとしてVTuberデビューした二人。一人はアイドル活動に消極的だった過去もあるほど「コレジャナイ」活動路線が敷かれることもあるようです(今は考え方も変化し、会社やファンへの恩で割り切って楽しんでいるそう)。

これはやはり、Vtuberとしての容姿が関係していると言えるでしょう。

美男二人がゲーム配信でユニット活動していて、仲も良く、歌も歌えるとなれば、一部の界隈の方々、そして会社は黙っていません(笑)Vtuber界も巨大なビジネスの一端を担っているわけですから、当然その動きを否定する気もまったくありません。

けれど、事実としてオネエ枠や色モノ系と言われるメンバーは、やはりこのアイドル枠に収まったり、強いファンがつくという求心力はあまりないように感じます。


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この動画は上の二人と同じ、にじさんじ所属のVtuberの面々。

こんなに美声で、歌も上手く、個性もバッチリ、再生回数も高いものがあるのですが、熱狂的な視聴者というよりはリスナーからはファミリー的な目線で愛されていることが感じられます。

この状況をどう思うかは人によってそれぞれなのでしょうが(本人たちはこの姿になりたくてなっているので問題ないとして)、個人的な考えとして「いつまでたっても容姿という枷にもて遊ばれ続けている人間たち、愛しい」という思いがあったりします。

そして、そう思わせてくれる【側】を選んだ彼らのようなVtuberには感謝したくてたまらないし、尊敬の念さえ抱いてしまうのです。

 

なぜVTuberにハマったのか、ようやく言葉に出来る。

この一年、Vtuberにまつわるこれらの見解や感情をずっとずっと心に温めていました。

ただの趣味という以上に、もはや“文化人類学”レベルに熟考できるテーマなのでは…?と一人何度も頭で反芻し、Vtuberとは一体何者で、私たちの生活や感受性にどんな影響をもたらしているんだろう、と大真面目に考えたり。

けれどその度にうまく言語化できる自信がなくて一年が過ぎようとしていた時。

はじめてこの曲を聴いて、「言える…!書ける…!」と確信したのです。


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この曲に惹かれた理由は「合唱」という自分に近いコンテンツだったからというのもあります。

けれど何より、合唱という統一性を重んじる演奏スタイルのなか、色とりどりで個性に振り切っているVtuberたちが勢揃いしている様は衝撃的で、そしてそれ以上に言葉にならないほど感動的でした。この動画を見て、なぜこんなにも自分がVtuberにハマったのか、ハッキリと答えが出たのです。

 

動画のなかの彼らは、男だろうが女だろうが、子供だろうが大人だろうが、何かのマイノリティであってもなくても、「声」を重ねることが出来ているし、

背が大きかろうが小さかろうが、露出が好きだろうがそうでなかろうが、イケメンだろうがそうでなかろうが、一緒に歌を「歌う」ことを選んでいるし、

ポリシーや信念が異なろうが、どんな過去があっても、やり方や歩くスピードは違っても、同じ未来を夢見ている。

神様も怪盗も悪魔も高校生も、パジャマ姿でも角が生えていても、巫女さんでもただの会社員でも、この中に入ることを拒まれていない。

 

何よりこの動画で雷に打たれたかのような衝撃を受けた私自身が、そう思える世界と自分自身を望んでいてVTuberにはそれを先導する力があるかもしれないからこんなに惹かれているんだと、この「色とりどりの色が一つの曲を歌う様」を見て明確に理解したのです。

 

 

Vtuberにハマったこの一年、正直に言えば「何でもできる」と言われがちなバーチャル世界も、予想以上に不自由な点が多いように感じていました。

底を覗けばリアルとは比べものにならないほど酷い闇もあるし、未だに低すぎるネットリテラシーに驚くことだってあります。

バーチャルは万能じゃない。

 

けれど、バーチャルにはリアルを未来へ「先導する力」はあるのかもしれません。

ほとんどの人がリアルで体験した「学生合唱」という、統一的である意味閉鎖的な何気ない記憶の一端を、バーチャル世界で同じように歌うことで新たな可能性を示してくれた…。

バーチャルは決してリアルからかけ離れた万能な世界ではなく、リアルな世界の隣を半歩先に歩き、リアルの感傷もそのまま引きずっていく繊細な世界なのだと思います。

だからこそ私は、音楽のように、それを演奏する人間のように、Vtuberという存在に惹かれているのだとハッキリと分かったのでした。

 

 

もしかしたら年内の更新はこの記事で最後かもしれません。

通常の音楽記事ではありませんが、個人的にはいつもと同じか、それ以上に満足できた記事になったので本望です(笑)。

いつかVtuberにも終わりが来ると思いますし、そのスピードはきっと私たちが想像するより速い速度で迫っていることでしょう。

けれど、このコンテンツから自分にとって大切な感情が増えたことはとても有難く、また一つ好きなカルチャーが増えたことにも感謝したいと思えた、実りある趣味の世界でした。

\ありがとう、Vtuberのみんな/


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ここまでお読みいただきありがとうございました!

今後も色々な音楽を聞いてブログに書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂けたら嬉しいです!

 

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