はじめに
2020年、今年もすでに折り返しですね。
悲しく、つらく、不安なことが多かったと思いますが、それでも半年経ちました。そしてあと半年が続いていきます…
本来このブログはゆるーく気ままに、がスタンスなのですが、この今の世の中でどうしても触れたいテーマがありました。
それは命のこと、経済のこと、情報のこと、社会のこと、世界のこと……
こう書くと仰々しいかもしれないけど、今年はこれらのことについて考えずにはいられない日々でした。
改めて全てが自分たちの「日常」に直結していることを強く強く実感したからです。
今回はそんな大切なことを気づかせてくれる、大きくも深いテーマの音楽をご紹介していきたいと思います。
テーマがテーマなので、いつもより熱い(厚いともいう)音楽が多いかも。より多くの方になにかが刺さればと思い、現代の曲を中心にご紹介しています。
すべての曲が何かを問いかけ、励まし、鼓舞し、癒してくれるものばかりです。
少しでも自分をとりまく物・コトに思いを持っている方に聞いて頂ければと思います。
I Dare You - Kelly Clarkson ケリー・クラークソン
ケリー・クラークソンがコロナ禍の世界を思って熱唱。
“――自分が一番不幸だと思っても それでも誰かを愛してみせて”
シンプルでストレートなメッセージですが、この状況の世界にはかなりキます。
綺麗事をいってる場合じゃないとはよく言いますが、ほんとはその逆ですよね。
窮地であれば窮地であるほど、綺麗事と言われることをやらずに生き残れる世界じゃない。
いいことも悪いこともいつか自分にかえってくるならば、最短の解決策はやっぱり助け合うこと。そんな思いがこもった「dare」が涙腺を刺激します。
サウンドもかなりシンプルですが、こころの奥底の何かを奮いたたせてくれる曲です。
ケリーはこの曲を6か国語のバージョン別に歌っています。世界にこのメッセージを届けたいという彼女の本気が伝わります。
そのほかにもたくさんのバージョンがありますが、なかでも世界の新人アーティストがカバーしたアカペラバージョンは圧巻です。
こんな時代こそ…未来を信じる若い力がもっともっと輝く世界になりますように……!!
What I've Done (Official Video) - Linkin Park リンキン・パーク
2013年発表曲。映画『トランスフォーマー』にも使用されてます。
7月はボーカルのチェスターが亡くなった月でもあり、ことさらこの曲を聞くと胸に熱いものがこみあげます。
タイトルは「I」となってますが、PVでまざまざと見せつけられる映像をみれば、伝えたいのは「わたしたち(人類)がやってきたこと」だというのは一目瞭然。自分事としての歌詞ですね。
ひとは戦争を起こし、テロを覚え、原爆を投下し、自然破壊を気にとめず、おなじヒトである仲間さえ迫害してきました。
一方、ひとが創造した信仰という行為は歴史から消えることがなく、幾度もの危機のなか小さくとも助け合いは生まれ、何の罪もなく命は新たに生まれます。
悪いことも良いことも含め、すべて「わたしたちがやってきたこと」です。
未だにそのメッセージは色あせず、むしろより緊張感をもって受け止める時代となってしまいました。
わたしは久しぶりに聞いて「チェスターがいたら(リンキンだったら)、今の世界をどう歌っただろう…」と思わずにいられませんでした。…実際にはそれをポツリと声に出してしまい、一人泣けてきたりもしました。
PVはラストに地上から芽が出てくるところで終わりますが、それは人類にとっての希望なのか、地球にとっての希望なのか。わたしのなかでは未だに答えが出ていません。
The Chicks - March March ザ・チックス
――あなたの声に何の力もないのなら 彼らはあなたを黙らせようとはしない
そんな冒頭メッセージから始まるこの曲。
女性カントリーバンドのディクシー・チックスが改名し(今までに活動自体を休んでいたのに仕事が早い…!そして潔い。)ザ・チックスとして約14年ぶりにカムバック。
さすがチックスとしか言いようのない凄まじいエネルギーです。
この冒頭文。強烈に懐かしい気持ちにさせられたので、少し余談をば。
過去に歴史を少し学んでいたので気づいたたのですが、これは歴史学の基本的な考え方です。
時の権力者が「○○禁止令」のような御触れを出した際、その時代の世相はその逆を欲していた、または逆の気運が蔓延していたことと見なします。
権力者が禁止令を「出したかったこと」が焦点ではなく、その逆のものを民衆が欲していた、ということに焦点を当てるのです。
そうすることで、所謂「勝者の歴史問題」から起こる矛盾を少しでも回避できるかもしれない…そんなことを学んだなぁと改めて思いだしました。そんなことを思いながら現実に起こっている世界の問題をSNSなどで目の当たりにしている現在のわたし…。
そういった意味でも過去と今はつながっている、と強く認識せずにはいられません。
話を戻しまして。
後半の犠牲者の名前をバックに畳み掛けるパート…
こんなのもうロックじゃん…
サウンドもパッションもエネルギーの向かう先もロックじゃんよ…。
まるで、イラク戦争の際に大統領にかみついた彼女たちの凛とした姿そのまま。いやでも代表曲「
彼女たちが心からカントリーできる日はいつになるんだろうか…。世界がずっとそうさせないのが見てて苦しい。
でもだからこそ歌ってくれてありがとう、と勇気づけられ感謝する。そんなずるいリスナーは、このわたくしです。
Carrie Underwood - Love Wins
ケリー・クラーソン同様、アメリカンアイドル優勝者の中でもひときわ影響力をもつのがキャリー・アンダーウッド。
カントリーポップのなかでもメッセージソングに相当する良曲をいくつも発表しています。シンプルな英語ですがちゃんと曲とマッチしているのが好き。
個人的に昨今のカントリー界は、テイラー・スウィフトの社会的発言や、今回の人種差別抗議による各バンドの改名、そしてキャリーのような若手アーティストのリベラルな立場表明など、目に見えて循環されているという印象を受けます。(そういった面でもテイラーはすごかった…)
少し前までチックスがカントリー界から受けた仕打ちを思うと、ずいぶん変わったなぁというのが正直な感想です。
外界と関わるのが少なかったジャンルだからか、近年の音楽的融合にも目を見張るものがあります。
とくに昨年は「Old Town Road」などのヒップホップとのフューチャリングも話題になりましたね。
リベラルがいいとか保守派がいいとかではなく、オープンにしていくことで自分たちの可能性も視覚的に見えるし、世界の見方も変わるのかもしれませんね。
どんなことでも最初は摩擦が起こるもの。
でもあきらめなければ、いつの間にかスムーズになって両者の顔がはっきり映るぐらい、その場所はピカピカになると思う。
元ちとせ 『腰まで泥まみれ』
元ちとせによる終戦70周年を記念してリリースした『平和元年』より。
ピート・シガー原曲に中川五郎の日本語詞をあてたカバーです。ジャパンフォーク界では岡林信康のカバーも有名。
反戦はもちろんですが、その内容には色々な意見があることかと思います。楽曲中でも「これを聞いてなにを思うかはあなた次第」と歌われています。
個人的には何が腰まできているのか、肩まで首までつかりそうなのかをよく考えなければ、と思います。
それと同時に、「今」のこの世界で一体なにが「馬鹿」な行為になるのか、進むときにもそうでないときも責任をもって考え続けなければならない、と痛いぐらい感じるのです。
最初に聞いたときから今日まで、そしてきっと今後も、こころに刺さったまま抜けそうにない曲です。
Eminem - Darkness
第1ヴァ―スと第2ヴァ―ス、第3ヴァ―スと過程を経ていくことで、エミネム自身の目線と銃乱射の犯人の目線をクロスオーバーしていくリリックが身震いするほど完璧。
両者の孤独や冷たい虚無感(今の日本でいうと闇。まさにDarkness)をたぐりよせ、真の問題やリアルな心理描写を聞き手に浮かび上がらせます。
エミネム自身は正義然とするのを嫌うかもしれないけれど(というか正義という存在を認めないと思う)、それでもラップゴッドとしての矜持やその責任をきちんとあらわしていく姿には本当に感動しますし尊敬しています。
トランプ大統領に対してフリースタイルラップをやってみせたことも話題になりましたよね。
やはり世代を牽引し世界をリードしていく人は、それと同等…いえそれ以上の重荷を背負いこむようになっていくんだな、と切なくも頼もしく思ってしまいます。
余談ですが、今年のグラミーでの「L
Nothing More - Go To War (Official Video)
戦いを忌み嫌っても、それについてはきちんと考えないといけないよな…と思わされる反面教師ソング。(もちろんタイトルはアイロニーです)
ストレートすぎるタイトルに引きつつも、 冷たい緊張感からじわじわと熱い爆発までもっていくサウンドが何回聞いても癖になります。
無理解と不寛容が臨界点を突破してしまうと、もう人は冷静ではいられない生き物なのかもしれません。だから理解しようとし続けなければならない。
個人間のことでもそうでないときでも、実際には一人一人のその臨界点にかかっているのですから、なかなか厳しいテーマです…。
Nothing More は、とにかくサウンドが重厚でお気に入り。
曲はけっこうキャッチーなんだけど、緩急のつけ方がえげつないんだよなぁ…。
最後、PVでは戦いの時は戻されます。徹頭徹尾、ラストまでアイロニックで幕を下ろすところに彼らの気概を感じますね。(現実では時を戻せない)
モーニング娘。'17『BRAND NEW MORNING』
発売当初も響く歌詞だったけど、今はもう…ズシーーーンって感じのハロヲタです。
誰かのことディスり蔑むより 素敵なとこ褒めてあげたい
争うこと嘆き悲しむより 平和のこと歌いあげたい
どんな曲で誰が歌おうと真実だから仕方ないね(笑)
こんな風に、日本のメッセージソングはシリアストーンのフォークやバラードよりも、ポップソングやEDMでサラっと訴えかけるスタイルの方がうまく馴染むように思います。(意外にネタ曲であっても胸にくるもんです)
不謹慎だとか軽いだとか違和感をもつこともあるかもしれませんが、個人的にはどんな過程でも「伝わればいい」と思うのでこのスタイルもいいな、と感じています。
そして、モーニング(ハロ)の魅力は、勝手に地球を背負って立ち、それが恐ろしくも「本気」だってこと。だから私たちオタも背負えるわけない地球をなんとか背負ってみようという気になってしまうのよね…。
新たなグループの幕開けを記念して(13期お披露目)歌われていますが、それ以上の意味を宿すことになった名曲です。
森口博子/宇宙の彼方で (「機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅳ 運命の前夜」主題歌)
日本語の歌詞のいいところは、音でもイメージでも余韻・余白を残す美しさがあるところだと勝手に思っています。
西欧音楽が主観的なメッセージに強い音楽だとするならば、日本は自分からのメッセージをみんなの「共有物」として溶かしていくのが得意なイメージ。
この曲は、そんな日本的な強みを最大限に引き出した歌詞、そしてそれを最大限に「強く」伝えようと踏ん張る曲(サウンド)に支えられた名曲です。
鋼の鎧に身をつつんだら こころが悲劇をまとってしまった
平和の願いはもう聞こえない 瓦礫が崩れる音に消されて
主観的な目線と第三者の目線を明確に区別しない、訥々と歌われていく歌詞がすごい。すべての歌詞に「そうだよね…」と頷かずにいられないほど、説得力があります。
博子姉さんの声も、よりいっそうこの世界観を悲しく切ないものにしていて、さすがにお見事。
けれど何よりやるせないのが、これだけの「共感」の描写をしておきながら、曲にできる最後の訴えが「祈りだけ」ということです。
せめて朝まで 祈りましょうか
いきなり突き放されたような第三者目線(歌姫的目線)。
戸惑いながらも、これが実際の現実なんだろうな…と気づいて、胸がキュッと苦しくなりました。
リリースされてから定期的に聞いている、特別な曲。どうぞじっくり歌詞を聞いてみてください。
Ariana Grande Performs 'Somewhere Over the Rainbow' - One Love Manchester
2017年。マンチェスター爆破事件後に開催されたチャリティーコンサート。
アリアナのコンサート中に起きたこともあり、まだ若い彼女が立ち上がり座長を務めあげました。
アリアナを知っていれば、これが彼女の完璧な歌唱ではないことはわかると思います。パフォーマンス中に涙ぐんだり声を詰まらせたりすることに対して、プロ意識を問う人もいるかもしれません。
けれどこのパフォーマンスには「歌手が歌う意味」についてすべてが詰まっている、ある意味これ以上ないほど完璧なステージだと思います。
つらいときも打ちのめされても人が何とか生きていくように、歌手はもう本能でその声を使って歌っていく。
それは卓越した「ギフト」的な意味を超越していて、歌うこと自体が生きるに値することだと信じているから歌っているのだと思うんです。
それが波紋のように広がって、リスナーのなかで影響し合い、いつの間にかみんなの共有財産になっていく……本当にすごいことです。
虹の向こうには希望がある―――
海のむこうの人々は昔からこの言葉を信じてきました。日本でいう雨降って地固まる、でしょうか。
昨今の日本ではそれも共感しにくい自然環境ですが、こころだけはずっとこの言葉とともにありたいと願っています。
おわりに
この半年で音楽に向き合う気持ちも、だいぶ変わってきました。
今までは「新曲まだかな~」「来日まだかな~」と、なにかと want ばかりな気持ちだったのですが、今は「大丈夫かな」「無事かな」「歌えるかな」という pray に近い感情が生まれています。
エンターテイメントや芸術の進むべき道はまだはっきりと見えていません。
受け手側のわたしたちがとるべきアクションも完璧な正解が分からないままです。
そんな現状ですが、これまでわたしたちの進むべき道を提示してきてくれたアーティストたちには感謝の気持ちしかありません。
せめて、彼らの本気の思いをとことん受けまくって、少しでも現状について考えてみよう。
考えまくって、それを無駄にしない生き方をしよう。
静かにそう覚悟した、とある夏の一日でした。