MusicCloset

Music Closet

MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

世界の音楽を聴いてきたのは、世界の声を聞きたかったから。

f:id:musiccloset:20220312153443j:plain

 


2月24日。

 

この侵略が行われる前と後、

世界はめまぐるしく変わっているけれど、

私のなかの思考はそれまでとほぼ何も変わっておらず、

文化がもつ力、それが人々に与える影響、そしてその間に生まれる信頼関係に強い希望を抱き続けています。

もちろん信じられない情報の数々に心がブレてしまったり涙を流すこともあるけれど、

文化への信頼というものは常に心の中心にあったような気がします。

 

にも関わらずブログの更新がとまったのは、

その文化への信頼を今簡単に言葉にしてしまっていいのか、

私はそんな立場にあるのかを、一度落ち着いて考えようと思ったからでした。

 

相変わらず音楽を聴き、映画や絵画などに接する日々。

多くの文化に囲まれた状況で、

自分の心にある<信じたいもの>を保ち、同時にそれを見極めようとしていました。

 

その結果、どう考えても何度悩んでも、

この問題に対し自分の思いを文字に残さないままブログを進めていくことは、私自身が納得できないという答えに辿りついてしまい、こうして書き記すことにしました。

 

ただ、今は何を書いても言葉が変な正義を纏ってしまったり、思ってもいないような意見の押しつけに聞こえてしまいそうで、

自身の気持ちや決意をきちんとした形で伝えることは、これまで以上に私にはできそうにないとも感じています。

いつもより稚拙で読みにくい内容ではありますが、

せめて一般的な耳障りの良い表現は避け、現在の情勢を前にした自身の言葉を剥き出しにさらけだすつもりで音楽を紹介していきたいと思います。

色々な見方やご意見はあると思いますが、そこのところをご了承ください。

 

以下の内容はウクライナとロシア、双方に関連した音楽の紹介になります。

これ以上今回の情報をお耳に入れたくない方は無理はせずにスルーしてくださいね。

 

 

Stand With Ukraine & Stop Russian Hate

f:id:musiccloset:20220304155234j:plain

 

ウクライナに心から尽くし、ロシア人へのヘイトを止める。

当事国には無理だとしても、第三者の世界にはこれが可能だと思っているし、それが出来てこそ真の民主主義だと思う。

そんな視点から双方に関わる曲を紹介します。

 

Not Your War-Okean Elzy


www.youtube.com

ウクライナ、ひいては東欧圏内でも最も人気のバンドの一つ、

Океа́н Е́льзи オケアン・エリズィの代表曲。2015年4月に動画が公開されました。

 

英訳歌詞の一部を抜粋してご紹介します。

 
A battle in the daybreak, the sun and smoke.
Very few ones know what will happen to them.
What will be tomorrow in youthful minds?
Ones will have hope, the others will have fear.
 
Guelder rose branches bowed down.
Mother, to whom did we pray?
How many of the children
The war, which is not yours, will take from you?
 
Daughter and sons became parents,
They had dreams full of colors at night.
They kissed the hands of Lies,
They paid their days for quiet nights.
 
It used to be so nice before.
There were no sweat and tears.
However there was no goal out of the whole thing -
I can’t stand it anymore, and how about you?
 
Guelder rose branches bowed down.
Mother, we prayed to wrong ones!
How many of the children
The war, which is not yours, will take from you?

 

LYRICS TRANSRATE 『Not Your War』より引用

 

自分たちの道を自らで考え、国や人としての幸福を模索し続けることがいかに重要か、

そしてその姿勢が崩れたときに起こることの代償を、一体だれが払うことになるのかを切々とパワフルに訴える曲です。

この曲が若者を中心に支持されること自体が、現在に通じるウクライナの国民性を非常によく表していると思いました。

 

戦いは常に外から、不条理にやってくる。

そんな悲しみにも目を背けず、歴史ごと抱きしめて立ち向かうという人々の思いが痛いほど伝わる曲です。

 

ロシア軍侵攻直前の緊張感が高まるなか、ウクライナの団結と平和を訴えるため路上パフォーマンスも行っていました。


www.youtube.com

 

1944-Jamala


www.youtube.com

 Jamala ジャマラはウクライナ出身のアーティスト。2016年ユーロビジョンではウクライナ代表として優勝しました。

今回の侵攻を受け、2022年のユーロビジョン関連番組にて胸迫るパフォーマンスを披露。世界に平和と人間の尊厳を訴えます。

Jamala はクリミア・タタールの血を継ぐ壮絶な人生を送っており、2014年のクリミア侵攻からは一度も故郷に帰れていないのだそうです。

今回の侵攻により現在はトルコに亡命中とのこと。

 

彼女の人生も計り知れない痛みの連続でありながら、さらにこの『1944』では、

1944年ソ連によるクリミア・タタール人キルギス追放を体験した彼女の曾祖母の痛みについて歌われています。

歌詞のサビは彼女のルーツであるクリミアタタール語。

ほか参加者が立って傾聴しているのは、ウクライナそしてこれまで黙殺されてきた命に対する哀悼の表れでしょうか。

 

When strangers are coming...
They come to your house,
They kill you all
and say,
We’re not guilty
not guilty.
 
Where is your mind?
Humanity cries.
You think you are gods.
But everyone dies.
Don't swallow my soul.
Our souls
 
I did not enjoy my youth
I was not able to live in this place
I did not enjoy my youth
I was not able to live in this place
 
We could build a future
Where people are free
to live and love.
The happiest time.
 
Where is your heart?
Humanity rise.
You think you are gods
But everyone dies.
Don't swallow my soul.
Our souls
 
I did not enjoy my youth
I was not able to live in this place
I did not enjoy my youth
I was not able to live in this place
 
I did not enjoy my homeland

 

LYRICS TRANSRATE『1944』より引用

 

ちなみにユーロビジョン2022は、必ず、絶対に、やってほしいです。

もう今年は世界放送にしてくれ。

 

Russians-Sting

音楽としてはスティングの『Russians』が、今も昔も非常に私の心情に近い曲です。

今回新たに歌われました。


www.youtube.com

冒頭スティングが「この曲はもうずいぶんと歌う機会がなくなっていた」と言っているように、洋楽愛好家でもこの曲をこうした形で再び聞くことになると思った人はいなかったと思います。

なんというか…スティングの声明と歌声を聞いたとき、私はどんな国家元首の言葉よりも希望と慰めを感じてしまい、いかに自分が彼を信頼していたかを実感しました。

 

オリジナルは1985年自身初のソロアルバム『Dream of the Blue Turtles』収録。

当時の米ソ冷戦下に書かれた歴史の証人のような音楽です。

Dream of the Blue Turtles

Dream of the Blue Turtles

  • アーティスト:Sting
  • A
Amazon

 


www.youtube.com

 

スティングはこの歌詞のなかで冷戦の構造自体を批判しています。

つまりはアメリカとソ連という二大国の政府による、市民たちを巻き込んだ愚かな駆け引きこそを批判しているのです。

今回の状況と違う点も多くありますが、イデオロギープロパガンダの応酬で、互いに善悪をつけたがっている点は現在にも通じる構造だと思います。

今目を向けるべきは間違いなくウクライナ市民なのに、です。

 

本歌はロシア帝国時代の作曲家 Sergei Prokofiev セルゲイ・プロコフィエフ


www.youtube.com

 

今回のことで身に染みて分かったように、一度政権が暴走し、

それにより歴史が動いてしまえば、各国個人の力は本当に非力で儚いものです。

 

それでも各国の市民に痛みを与えず非道な侵略を阻止するという手段が、本当にこの世にはただの一つもなかったのかと疑問に思います。

世界も日本も私自身も、それに全力を尽くしたと言えるのでしょうか。

 

民主主義自体はとても素晴らしいし、私は100%支持するけれど、

時にその民主主義を勘違いした横暴や怠慢が、別の何かに罪を着せて闇に葬ったりしてこなかっただろうか。

 

この数週間ずっとチャップリンのスピーチが頭から離れない。

彼が言うように私たちは、あまりに考えすぎて感じなくなったのかもしれない。


www.youtube.com

 

胸をはって民主主義を名乗るなら、自由を手放したくないのなら、

ウクライナ市民のみを犠牲にし、見放してしまっているというこの事実と責任を、世界全体で分かち合うべきです。

とても恥ずかしく惨めな気持ちになると思うけど、きっとその反省を経て導き出される解決方法は、今想像されている答えとはまったく別のものになると思う。

今回、この責任や反省について自由を尊ぶどの国からも声があがらないことに、私はどうしても気味の悪さを感じてしまいます。

 

そして同時に、過去に敬意を払いながらも囚われず、

常に未来を尊重し、未来を選び続ける勇気を全ての各国政府は忘れないでほしい。

それほど大切な「国家」を担うあなたの子どもは、あなたが選んだ未来で生きることになるのを覚えておいて。

 

『Russians』は私の歴史観を形作った曲の一つで、スティングのなかでも一番好きな曲でした。自身の反省と決意の意味もこめて、これからも聞き続けます。

 

▼二年前にブログでもとりあげていました…

musiccloset.hatenablog.com

 

なぜ、音楽紹介なのか

f:id:musiccloset:20220313001304j:plain

 

ブログを通して自分に何ができるかを考えたとき、

それは、今まで確かに通じ合っていた感覚を忘れずに、文化に憎しみの連鎖をかぶせないよう音楽を紹介することだと思いました。

 

今後生まれる子どもたちがいかなる音楽や文化も、恐れや憎しみで避けることがないように。

文化は文化の姿のまま一人一人に語りかけていることを忘れないように。

そして文化は互いを尊重し理解し合うことの一助になっていること、

文化の作り手が同じ人間だということを変わらずに伝えていきたいと改めて思います。

 

私の好きなロシアのアーティストは、2022年2月24日にSNSにて戦争反対の声をあげてから新たな更新がないままです。

彼らの無事を祈るとともに、今後もウクライナとロシアの音楽、ひいては世界中の音楽をこのブログで紹介し続けます。

 

綺麗事は必要、ちゃんと行動するなら

f:id:musiccloset:20220304230951j:plain

 

つくづく、そう思います。

 

綺麗事を少しずつ行動に移せたら、もしかしたら何かが変わるかもしれない。

何の解決にはならなくても、誰かの慰めにはなるかもしれない。

今は変わらなくても遠い未来、

何かの形に姿を変えて、誰かの目にとまるものになっているかもしれない。

 

だからやっぱり私はぐるぐると考え続け、しつこく声をあげ続けていきたいと思います。

せっかく言葉をありのままに出せる国に生まれたのだから。

こうして好きに文字を打てる環境だってあるのだから。

死ぬときに後悔はしたくない。

 

今後はもっと政府に直接自分たちの声が届くように効果的な行動をしていきたい。

私たち一人一人の力は未熟で非力だけど、国を動かす自分たちの政府が(一応は)機能している間に、もっと知恵を絞って私たちの声を聞いてもらうような行動につなげたいです。

自分に与えられた自由をもっと欲しがるためじゃなく、

もっと多くの人や国と自由を分かち合うために、しなければならない責任を自分自身に意識させるためです。

 

最後にウクライナ国家『ウクライナは滅びず』の合唱と、

ウクライナヨーデル使いソフィア・シキチェンコが歌う、デスティニーズ・チャイルドのカバー『Stand Up For Love』をご紹介します。

 


www.youtube.com

この数週間で一気に距離が近くなったウクライナ国歌ですが、勇ましいバージョンだけでなく、ひたむきに自由を求める子どもたちの歌声もまた聞く者の心を震わせます。

最初から最後までウクライナの血が通う、まるで大河のような歌詞の全編を機会があればぜひ目を通して頂きたいです。

ウクライナの栄光も自由もいまだ滅びず
若き兄弟たちよ、我らに運命はいまだ微笑むだろう。
我らが敵は日の前の露のごとく亡びるだろう。
兄弟たちよ、我らは我らの地を治めよう。

我らは自由のために魂と身体を捧げ、
兄弟たちよ、我らがコサックの氏族であることを示そう。

 

Wikipedeia 『ウクライナの国家』より引用

 


www.youtube.com

ソフィアは侵攻直前の2022年2月22日にこの曲をアップしており、最後まで希望と平和を信じていました。

もともとこのブログでも近いうちに記事を書こうと思っていた大好きな歌手です。

例え私から彼女に出来たことは何もないと自らを納得させようとしても、彼女を失望させてしまったことを今どうしても恥じてしまいます。

彼女は現在も世界のどこかから、侵略に抵抗するために日々歌い続けています。

 

 

 

長くまとまりのない文章をここまで読んでいただきありがとうございました。

通常の音楽紹介がいつになるかは分かりませんが、今はこの情勢を注視し自分の心や時間を尽くしたいと思っているので、どうしても関連したシリアスな内容が続くかもしれません。

その中でもアフリカや中央アジアの音楽などにスポットをあて、出来るだけ今回のことを多角的な視点で捉える機会になるような音楽を紹介していきたいと思います。

 

その内容はちょっと…と思われる方もいらっしゃると思いますが、こればかりは本当に申し訳ありません。

また別の内容で書き始めたときに改めてよろしくお願いします!

それでもいいよという方は、引き続きお時間あるときに共に音楽を聞いて頂けると嬉しいです。

ちなみに私は普通に元気です!

 

どうしても心塞ぐことが多い状況ですが、

皆さまが好きなことや幸せに感じること、

そしてそれを共有したいと思う大切な方たちと

少しでも穏やかで健やかな日々を送れますようお祈りしています。

 

▶そのほかのウクライナ情勢に関する音楽はこちら

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

 

▶そのほかのヨーロッパに関する音楽はこちら

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

 

▶そのほかの時事問題に関する音楽はこちら

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

musiccloset.hatenablog.com

 

 

f:id:musiccloset:20220304160711j:plain