feat.Sting が意味する偉業 ~スティングの若さ(と音楽)の秘密に迫る~
ここ数か月、改めてスティングの若さに驚愕する日々が続いています。
たまたま久しぶりに聞きたくて彼の曲をタップしたところ、このご時世なので芋づる式にオススメが連投。翌日から出てくる出てくる「○○ feat Sting」の文字……
興味をひかれ改めて何曲か聞いてみた今、切に思います。
スティングって今いくつだっけ…???
わたしが初めて聞いたのがウン年前だからええと…と逆算してみても俄かに信じがたい容姿、そして音楽活動。
ということで急激に彼の若さについて興味が湧いてきましたので、思いついたまま音楽紹介とともに書いてみました。
前回といい最近無意識にイギリスめいている…
柔軟すぎるポリス時代
ご存知のとおり、スティングは1977年にポリスを結成しバンドのボーカリスト兼ベーシストとして活躍しました。
ジャンルにしがむことのないスタイルだったので(おそらくこれもスティングの舵捌き)、後世の人間からするとデビュー期のパンク以上にニューウェイブ的な印象が強いバンドでした。
1986年に解散。2003年にロックの殿堂入りをしています。
当時の代表曲は「ロクサーヌ」「見つめていたい」など。
幼い頃すごく年長の知人からこれを薦められたけど、さすがに反応を示せなかったのを覚えてる。後の印象に関わるから推す時期は考えてくれ…
音楽漬けなりたての頃も尖っていたため、ニューウェイブやAORは華麗にスルーしてしまいついぞポリスに絡むことはなかった…。今は好きな曲です!(手のひら返しがすごい)
2007年にはデビュー30周年を記念して再結成。80本以上のワールドツアーを敢行し、日本には2008年に来日しています。
やっばー…!年を重ねた演者とボロボロのベース…これ以上にセクシーな組み合わせってある?
輝き増し増し ソロワーク
1985年にソロワークを活動してからスティングの輝きは増しに増します。
シンガーソングライターとして多くの名曲を生み出す傍ら、俳優としても活躍。80年代~2000年初頭のグラミーなどは最早や常連と言っておかしくないほどの創作ぶりでした。
何度聞いても天才すぎるイントロ。レゲエの裏打ちをこんなにブリティッシュ・ロイヤルにできるなんて、もう一種の発明。
名作には名曲を。映画『レオン』のテーマ曲として作品にこれ以上ないほどの彩りを加えた。
今回は後半のフューチャリングに焦点をあてたかったので乱暴に割愛しましたが、彼の名曲は推挙に暇がありません。
さみしげな目線と独特の観察眼によるリリックは非常に噛みごたえがあり、今聞いても考えさせられるものが多いです。
鋭く果敢な政治的メッセージソング
スティングはヒット曲と同時に多くの歴史的なメッセージソングを歌うことでも知られています。
観察眼の鋭さゆえか時世の動きにも敏感で、いつの時代であっても社会のどこかが動く(揺らぐ)度にしなやかに登場。いくつもの名曲を残してくれました。
米ソ冷戦期について書かれた渾身の一曲。
西側からみたソ連のミステリアスなベールをバックサウンドにしながら、東西平和を切に願った名曲でイントロから鳴る秒針が当時の緊張感を伝えます。
余談ですが久しぶりに聞きたくなり今回の記事のきっかけとなった曲がこれ。
ロック歌手でもこんなに赤裸々に国家間(ここ重要)の政治について歌うのか…!と、当時ロックは日本のヒット曲しか聞かなかった自分にとって衝撃的だった曲です(学んでいくうちに、ロックが政治について歌わなかったらどうするんだという当然のことにも気づくわけですが…)。
もし音楽観の分岐点なるものがあるのなら、わたしにとって比較的冒頭にあらわれる大切な曲です。
ポリスのイメージ脱却をはかる意欲的なファーストアルバム『The Dream of the Blue Turtles』収録。
また2002年のソルトレークオリンピックでは、ヨー・ヨー・マと「
雨は語り続ける…というお決まりの歌詞をこんなにもさりげなく、そして深く心に沁みこませるライティングはさすが一流のシンガーソングライター
近年でも2015年パリのバタクランにて、同社の再開コンサートを主催。いつまでも変わらない音楽家としての目線とアクティブな活動には感動しました。
若さの秘密はフューチャリングにあり?
フューチャリングしないと生きられない呪いにかけられているんじゃないかと思うほど、スティングの楽曲参加への姿勢は常に貪欲です。
大御所といわれるなかでもこの作品の多さは際立っていて、個人的にあるアーティストのアルバムを買った際に「またいらっしゃる…」といったケースも数多く経験しました(笑)
とくに2000年以降はアフリカンサウンドへの傾倒はそのままに、ヒップホップやEDM、シャンソンなど幅広いジャンルの作品に参加しています。
スティングともなるとフューチャリング相手は自然と若手が多くなるわけで(もちろん彼以上の大御所ともやりますが)、スティングの若さはこの音楽的刺激と若いパワーによって持続されているんじゃないかと思っています。
まさかのメロディー・ガルドーと見目麗しいコラボ。完全に俺得状態。ギターラインがスティングよりなのも嬉しい1曲で、近年のフューチャリングでも特にお気に入り。
スティングと歌うからか、カントリーに独特な翳りがでて切なさが倍増するのもいい感じ。スティングにはこんなカントリー唱法も実にしっくりくる。それにしてもいい曲です。
冷静に考えればスティングの声はR&Bと相性がいい。リリックのなかで“Shape Of My Heart”をフューチャーしてくれているのも関係性がみえて嬉しい。
久々にレゲエサウンドでシャギーと。容姿以上に声が若い…声は老けないというのは本当だな。
これはありそうでなかった!こうやって聞くとコンテンポラリーな楽曲もいけるし、二人の声の相性が抜群なのもわかるし、何かと発見が多い1曲。
「ちょうどいい声」をギフトに変えて
前述したようにスティングは様々なジャンルの音楽でコラボし、そのなかでも独特の存在感を放ってきました。
それはスティングの貪欲な音楽的姿勢に加えその才能、そして彼の「声」によって成立してきたものだとわたしは考えています。
彼の声は俗にいう「いい声」です。
少しかすれ気味で男性特有の吐息まじりなセクシーさがあり、強さを求められるパートでは篭りをいっさい抑えた直線的な唱法になります。それだけで聞き手をうっとりさせる声質の持ち主です。
ただこの才能は「いい声」という事実だけが先行して足枷になってしまうこともあり、アーティスト本人の個性が発揮されない場合もあります。
けれどスティングのすごい(と恐れながら勝手に私が思っている)点は、美声ながらなかなかに抑揚の波が独特で、且つ劇的であるということです。
とくにバラード調の曲で顕著なのですが、彼はあまり「流れるように歌う」ことをしていないように思えます。まるで自分の声の完璧さに待ったをかけるように、自ら歌詞の流れにひねりを入れている(ように聞こえる)のです。
前述の「ラシアン」においても、彼の発音・発声は一貫して母音を意識したかのような「のっぺり平たく」の一択のみで歌い方を統一しています。
この曲はかなり強いメッセージソングですから、当然歌い方も何通りもあったはずです。同じ強さのなかにも「語りかける」ようなものもあれば、パワーで押し通すような方法もあったかと思います。
意識的であっても無意識であってもスティングがこの歌い方でこの曲を歌ったことに意味があり、この歌い方だからより聞き手の耳に強く残る名曲になったと感じます。
また2拍以上伸ばす音を、まるで「掴みにいく」ように的確なピッチで押さえているのも特徴的です。
ほかの音処理はため息をつくように自然のまま流すことも多いですが、この緩急つけた歌い方で曲全体に動きがうまれ、スティングの声をより際立たせているように思います。
…以上、超絶一人よがりな考察でした。
なにが言いたかったかというと「スティングの歌声はすごい」ってことです!
お手本にしたい多様性的ライフスタイル
さて、本題だったスティングの年齢ですが、なんと御年69歳でした。
伝説級のアーティストのなかには、もちろん化物並みに若い人もいることにはいるのですが、スティングはとにかく「老け込んだ」印象が1ミリもありません。これがすごい。
昔と変わらずに、音楽で声をあげ、音楽を楽しみ、音楽でつながる人たちに囲まれているスティング。
以前ジョーンズの生き方についても触れましたが、結局、物事を肯定的に受け入れる生き方が自分を肯定してくれる糧になっているんですね。
そんな老後を目指しつつ憧れつつ…
これからも我々後輩たちは彼の曲を愛しながら同じように年を重ねていくのでしょう。
少しだけ年をとるのが楽しみになった…というのは言いすぎかなぁ。