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MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

イギリスを感じたくなったら聞く音楽

 

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気軽に海外へ行ける日がいつになるか分からない…

けれどせめて気分だけでもイギリスを感じたい…

 

そんな日々を過ごすこと約半年。

最近その我慢メーターが自分のなかで振り切ってしまい、その結果この【イギリスを感じたくなったら聞く音楽】をテーマに書いてしまいました。

かなり個人的なラインナップなので「チガウ、ソウジャナイ」と思われる曲もあるかもしれませんが、ちょっとでもロンドンの街並みが思い浮かぶような曲を選んでみたつもりです。(イギリスと言ったら!というような選曲ジャンルでもないのであしあらず…)

 

同じ思いでいらっしゃる音楽愛好家の皆様。

お時間あるときに紅茶片手にご覧いただき、少しでもそのストレスが緩和できればと思います……。

 

 

 悪童とロイヤリティーの交錯 憎めないバンドサウンド

 

イギリスといえばやはりバンドサウンドは欠かせません。

ここからは、とくにわたしが「イギリスっぽさ」を感じるバンドサウンドをあげていこうと思います。

 

You Really Got Me -The Kinks 

 

 

  • レイ・ディヴィス作曲
  • 1964年にリリースし全英1位、アメリカのチャートでは7位にランクイン
  • バンドの代表曲であり、当時ブリティッシュ・インベイジョンのグループの一つとして音楽シーンに大きな影響を与える
  • パワーコードで構成されたヒット曲の先駆けとされておりハードロックやヘヴィメタルなどの前進とも言われる名曲

 

個人的にイギリスというより「英国」。この曲をきくと英国への憧れに胸が躍ります。

物心ついたときからずーっと聞いてるのに、まったく飽きる気配なし。この頃のバンド隆盛期でもとくに好きな曲です。

けっこう良質でキャッチーな作りなのに、ところどころ荒削りでそのミスマッチさもセクシー。

 

One Way Or Another (Teenage Kicks)-One Direction

 

 

  • オリジナルはブロンディーの「 One Way Or Another 」/アンダートーンズの「Teenage Kicks
  • 2013年のコミックリリーフチャリティーソングとして提供
  • 英国チャート1位、翌2014年ブリットアワードにもノミネート
  • PVには当時のキャメロン首相もゲスト出演している

 

One Way or Another (Teenage Kicks)

One Way or Another (Teenage Kicks)

  • ワン・ダイレクション
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲を当時のキンクスが歌っててもおかしくないし、“You Really Got Me”を彼らが歌っても違和感ない。

曲調が似るのは歴史に起因するから当然としても、この「死んでも余裕かましてやる」という気質そのものがイギリスよね…(笑)

でも、私にとってイギリス(の若さ)ってそういうこと!

 

All the Way from Memphis - Mott The Hoople

 

 

  • 1973年全英10位をマーク
  • グラムバンドを代表するバンドの一つで後進のパンクムーヴメントでも支持を受ける
  • ほかにデビッド・ボウイ提供の『All The Young Dudes』は全英3位をマークし最大のヒットとなる
All the Way from Memphis

All the Way from Memphis

  • provided courtesy of iTunes

 

グラムほどチグハグで歪つな印象のジャンルはない。なぜに化粧してロックンロールしてトーキングボーカルなの…意味わからん…

好きです

 

この前衛的で若さ爆発なバンド群のなかでも、なぜか波長があったのがモット・ザ・フープルであり、この曲でした。

改めてアルバムセールスをみると爆発的な記録を残してるわけではないんですが、キャッチーな曲に対してしっかりしたアレンジで聴かせるのが心地いいのかな、と思います。

 

Throw Down The Sword-Wishborn Ash

 

 

  • サードアルバム『百眼のアーガス』に収録され、最大のヒットとなり英国3位をマーク
  • アルバムのジャケットはアートグループのヒプノシスが制作
  • ツインリードのギタースタイルで有名
  • アンディ・パウエルとテッド・ターナーローリングストーン誌における「偉大なギタリスト20」に選出

 

初めて聞いたときに「バンドでこんなヒストリーなことをしていいんだ…!」という単純な発見と、この曲で感じたイギリスの“歴史”ってこんなに湿っぽいんだ…!という衝撃が強すぎて。

この曲からどんどんイギリスのトラッドフォークにはまっていき抜け出せなくなっていくので、恨み半分感謝半分。わたしにとって分水嶺のような1曲です。

 

洒落なしには生きられない

 

イギリスの音楽はとにかく洒落ているものが多いです。

誤解を恐れずにいうならば、とにかく捻りが多くシュールなアレンジに洒落を感じる傾向があるように思います。(だからこそ革新的で先進性が備わっているともいえますが)

とくに洒落を大切にするジャズ/ブルース/フォークソングではこの姿勢が顕著なような気がするので、ここで何曲かふれておきたいと思います。 

 

Oh God-Jamie Cullum

 

 

  • セカンドアルバム『Catching Tales』収録  
  • ジャズシンガー兼マルチプレイヤーで過去には海の上のピアニストとしてクルーズ客船で演奏
  • ポップヒットソングなどを自身の解釈でジャズアレンジする Song Society も好評

 

ジャズバラードに5拍子…

悲哀だろうがセンチメンタルだろうが悲しむ隙を与えない。そんなところに強く「イギリス」を感じてしまう曲。

メロディーの母体はそれだけでパーフェクトなのに、わざわざ歪ませるところに洒落を感じるのは、わたしだけでしょうか(笑)何度聞いても高尚な遊びのようです。  

 

I Want To See The Bright Lights Tonight -Richard and Linda Thompson

 

 

  • フェアポート・コンベンションのギタリスト、リチャード・トンプソンと その夫人リンダ・トンプソン名義のユニット
  • 1974年リリースのアルバム『I Want To See The Bright Lights Tonight』収録
I Want to See the Bright Lights Tonight

I Want to See the Bright Lights Tonight

 

後述するイギリスの「影」が見え隠れするこのアルバム。わたしにはよりイギリス的目線を映す作品だったので選んでみました。

 

むきだしの生を吼えつつ達観というか老成というか、そんな冷めた目線もあり、フォークの形をとりながらも押しつけがましくないアレンジで聞き手をイギリスの日常へと誘います。

ストレートなリンダの声に青白く響くリチャードのギターサウンドが癖になる1曲です。

 

孤高なる女性アーティストたちの躍進

 

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ご存知のとおり、イギリスは王座に“女王”が座する国。

それと関係があるかは分かりませんが、近年の英国女性ソロアーティストの存在感には目を見張るものがあります。

質の高い楽曲や、ライティングに見える強い意思。確立された自身の世界観や、それを思いのままに演出できるエネルギーなど、強く個性豊かな女性が多くなりました。

ここからはそんな女性ソロアーティストの「イギリス的」楽曲をいくつかご紹介。 

 

Skyfall-Adele

 

  • 映画『007』シリーズ第23作目「007 スカイフォール」テーマ曲
  • アデルが作詞を手がけ、ポール・エプワースがプロデュース
  • 第85界アカデミー賞、歌曲賞受賞

 

歴代のボンドシリーズでもとくに好きな曲。さすがはアデル、鳥肌もののコンセプトソングに仕上げています。

後半の大サビも、ただダイナミックなオーケストラサウンドを置きに来たわけではなく、ちゃんと音の一つ一つが苦悩しているような仕上がりで圧倒されました。

ボンド(もしくは英国)の影の部分を、これ以上ないほどイギリスらしく威厳に満ちたサウンドで表現していて未だにお気に入りです。

 

Littlest Things-Lily Allen

 

  • ファーストアルバム『Alright, Still』収録
  • 同アルバム収録曲はすべてイギリスっぽさを感じるのでオススメ
  • 個人的にかなりイギリスらしさを全面に感じさせる女性アーティスト
Alright, Still

Alright, Still

 

2010年あたりからのイギリス女性アーティストの躍進は非常に独創的で、尚且つしなやかな勢いだった印象があります。前述のアデル、フィオナ・アップルパロマ・フェイス、そしてこのリリー・アレン

どの女性もいい意味で一筋縄ではいかない個性的な音楽観をもち、強い意思をもってメッセージを発信し続けている素晴らしいアーティストたちです。

 

なかでも楽曲によりイギリスらしさを感じたのが、リリー・アレンのファーストアルバム『Alright, Still』でした。

懐古的で感傷的なサウンドとコケティッシュなリリーのボーカルが絶妙にマッチし、なかなかにドギツイ歌詞も心地よく耳におちていきます。その癖になるフィット加減が実にイギリスの洒落た歪さで、わたしにはお気に入り一枚です。

 

Daddy-Emeli Sandé 

 

  • ファーストアルバム『Our Version of Events』収録
  • 同アルバムは英国チャート1位を獲得、2013年にはブリットアワードでは最優秀アルバム賞を獲得
  • 稀代のシンガーソングライターとして注目され、シェール・ロイドやリアーナなどに楽曲提供している
Our Version of Events (Deluxe Edition)

Our Version of Events (Deluxe Edition)

  • エミリー・サンデー
  • ポップ
  • ¥2648

 

どちらかというとイギリスの「ロイヤル」パートを担うような、格式高く清廉なサウンドが印象につよいアーティスト。

前項でふれた「おふざけも正義!なバンドサウンド」と対照的な音楽の世界観ですが、この国をイギリスたらしてめいる不屈のエネルギーはその両者からにおいたつので不思議なものです。

 

彼女のもち味は祈るような力強い声。ダークな世界観のこの曲でもソプラノの輝くようなボーカルが際立ます。 

ライブCD『Emeli Sandé Live at the Royal Albert Hall』も名盤。良曲で高質なサウンドで是非一度イギリス気分を味わってみては。 

Live At the Royal Albert Hall

Live At the Royal Albert Hall

  • エミリー・サンデー
  • ポップ
  • ¥1731

 

陰を隠さない音楽

 

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改めて振り返ってみて、我ながらイギリスの天気みたいな選曲で笑ってしまいました。好みうんぬんより、捻くれた自身の性格が反映されただけかもしれません(笑)。

 

それはさておき、事実としてイギリスの音楽はどこかしら影めいたもの、湿り気を帯びたものを感じる曲が多いです。

わたしはその「陰」の部分にずっと憧れてきました。

 

政治や歴史はその暗さを隠しがちだけれど、芸術は決してそれを隠さない。

不条理な怒りや、見苦しい後悔、ときには「希望なんて何もない」という身も蓋もない生の声を、これでもかと声をあげられることが芸術の強みです。

もちろんそれはどの国の芸術にも共通しているのですが、とくにイギリスの音楽は「ほの暗さをコントロールしながら意思を表現する」ことに長けているように思います(もちろんそれは地質学などの気質からきているものだと思いますが)。

 

(いろんな希望を信じたいけど、たまには信じられない日々があったっていい)

こちらの心を見透かしたように影を隠さず綺麗に見せることをしない、そんなイギリスの音楽がわたしは好きなのです。