米津玄師、藤井風、NakamuraEmi、iri など、最近は日本でも【次世代型シンガーソングライター】の躍進が顕著になってきました。
個人的なイメージなのは百も承知ですが、少し前までのシンガーソングライターといえば “ギター一本” “弾き語り上等” “本物ならアングラであるべき”というような風潮が少なからずあったと思います。
おそらくこれはシンガーソングライターの出身ジャンルがフォークに集中していたからだと思いますが、それが最近ではポップスやヒップホップ、乱暴に言えば【メインシーン】での活躍がめずらしくありません。
今回はそんなシンガーソングライターの音楽的変化を実感しながら、私が思ったあれこれを Sandro Cavazza サンドロ・カヴァッツァの音楽を紹介しながら、気ままにお話したいと思います。
ダンスビートに見出されたシンガーソングライター
綺麗な音楽っていうのは本当にたくさんある…。いろんな音楽を聞いているつもりでも、結局それには限界があって、たまに呆然としちゃう。
Sandro Cavazza サンドロ・カヴァッツァはイタリア出身のスウェーデンを拠点に活躍するシンガーソングライター。2014年から活動を開始し、これまでにEP2枚をリリースしています。
彼を話すうえで欠かせない人物が、ダンス音楽界の革命児 Avicii アヴィーチーです。
日本でもアヴィーチー旋風はすさまじく、彼が亡くなったときはとくにファンでなかった自分も大変なショックを受けました。
EDMが主流だったダンスミュージックに、カントリーやフォークという親しみやすい音楽を融合させ、これまで以上に多くの人を熱狂させたアヴィーチー。
そんな彼が早くから注目していたのがサンドロ・カヴァッツァでした。
アヴィーチーへの敬意を表したトリビュートライブで熱唱。ビートにのりながらもこの歌詞には目頭が熱くなります…
アヴィーチーの曲を好んで聞かなかったとしても、この声を無意識に耳している人は多いはず。
この曲で広く知られるようになったサンドロですが、アヴィーチーとは他にも数回タッグを組んでいます。
おすすめ曲
ここからはアヴィーチーも注目した彼の音楽について、簡単に紹介していきたいと思います。
ビートとギター音が小気味いい反面、独白のようなメロディーが虚無感を広げていく何とも物悲しい1曲。
一貫して第三者的な目線のままバッドストリートの子守歌のごとく曲が展開していきますが、「 it’ll be alright」と閉じていくあたりにサンドロのあたたかい視線も感じます。
ステイホーム中に制作したという今回の最新EP『Weird&Talkative』。
“自分を元気にさせるために書いた”といいますが、しっかりリスナーの気持ちまでのせていくメロディーがサンドロらしい。
個人的にこのジャケットもすごくお気に入りです。
まるでアヴィーチーが乗り移ったかのような1曲。もしかしなくても、互いに互いの音楽の一部だったのかもしれませんね。
ちなみに、彼は家族の大病というショックと悲しみに見舞われ、それが作曲の原点になったと語っています。
近年ダンスビートに心を熱くし時に感動してしまう現象は、強制的に「前へ前へ」と展開されるダンス音楽に、こういった作り手の思いが自然と宿ってリスナーが励まされるからなのかもしれません。
電子音にも感動する時代
わたしは(自分含め)「電子音にも感動する時代」という言葉を勝手に使っているのですが、それを近年のシンガーソングライターの音楽にも感じることが多くありました。
もしかすると、人によっては「音楽はやっぱり生の音でなくては」「シンセや打ち込みはどうしても好きになれない」という意見の方もいるかもしれません。
それこそ60~70年代に青春をおくり、様々な素晴らしい生の音(演奏)のパフォーマンスを聞いて育った世代の方にはその思い入れもひとしおだと思いますし、私自身もその時代の音楽が大好きで、これまでに何度も何度も感銘を受けてきました(音楽好きになったのもこの時代の音楽に大きな衝撃と影響を受けたからです)。
けれどその意見に共感する一方、私は初音ミクの声にしっかり感動したこともありました。
そして感じたのが
電子音(人工音)と共に育った人にとっては、この音も人生を彩る「生の音」になっているのかもしれないということ。
自然から恩恵をうけたカントリーやフォークなどの音楽に感動するように、彼らには電子音のなかに音楽的情緒をくみ取る新たな感覚が備わっているのかもしれないと感じました。
もちろんその音楽によって感動の質感は異なるものでしょうし、生きる時代(とくに青春期)が違うといったような環境からくる、感性の違いはあると思います。
ですが、電子音だからその音楽には豊かさがない、とは必ずしも言えないのではないかと今は感じています。
歴代の素晴らしいシンガーソングライターであるジェームス・テイラーやジャクソン・ブラウンの曲で得られる感動も、EDMのビートに見出された次世代型シンガーソングライターが作り出す感動も、それはどちらも最上の感動になっていると思うのです。
この2曲はアヴィーチー未完の作品を、彼に縁のあるサンドロとカイゴが完成させました。
ボロボロと涙が出てくるような音楽ではないかもしれませんが、心に何かを訴えられているような、そんな感覚になります。とくに「Forever Yours」は冒頭、スティングの「Shape Of My Heart」のアレンジもあってより感慨深い曲に仕上がっています。
長々と書いておきながら非常にシンプルで当たり前な結論になってしまいましたが、
その曲に思いが宿っていて、聞き手に伝えるための効果的な手法を用いているのであれば、どんな音楽にでも人は感動する
というのが、多様なジャンルのシンガーソングライター躍進について、私が思う現在の考えです。
とりとめのないお話になってしまいましたが、最近のシンガーソングライターの傾向とサンドロの曲を聞きながら、ふと気になったテーマだったので何となく思ったことを書かせていただきました。