最も好きなミュージシャンは誰かと聞かれたら、わたしにとってそれはジョン・ポール・ジョーンズ(以下ジョーンズ)。言わずとしれたレッド・ツェッペリンのベーシストです。
バンド初期のようなツェッペリン号へのフューチャー具合がめちゃくちゃ痺れるMV。最近はよりバラエティーで使われるようになってしまい、そのたび真顔になる。
今更、ツェッペリンの何を語る必要があるのかと言われそうですが(そしてその通りですが)今回はただのジョーンズ好きがジョーンズを愛でる内容でおブログしていきたいと思います。
ツェッペリンについては割愛も割愛なのでご了承のほど、よろしくです。
ツェッペリンに在籍したスナフキン
わたしのジョーンズのイメージはこれに尽きます。やめろ、と石が飛んできそうですがこれはマジ。
もちろん冬になると旅立ってしまうわけではなく、最初から最後までメンバーとしてバンドの「音楽」に貢献した名ベーシストでもあります。
10:40~のトリップ調から一気に冒頭のリフへ落とすのたまらん。ペイジの演出だとわかっちゃいるが4人全員で一呼吸かまえる姿はいつ見ても痺れる。ジョーンズがにやつくのも良き。
もともと音楽一家に生まれ、音楽で世界旅行もしていたようなので、音楽に対するフットワークは非常に軽い。ジャンルにとらわれず、とにかく音楽に触れあっていたい性分みたいです。
また、バンド加入前からセッションミュージシャンとしてすでに売れっ子だったことからわかるように、そもそもが職人気質。
モンスターだらけのこのメンバーのなか唯一の常識人でもあり、メンバーが破壊したホテルも部屋はべつにとっていたみたいで、個人的にこれには安堵してしまいました。
ほかのメンツがメンツなので逆に異質だった印象も。音楽以外ではメンバーとは距離をおいていたようにも感じます。(なのに音楽の化学反応はトンデモナイので、メンバーシップとしてはお互いにかなり大人だったのかな。同時代のほかのバンドよりもメンバー間のつかず離れず感はめちゃくちゃ洗練されていた印象があります)
それも踏まえて思うのは、ジョーンズは「ツェッペリン」自体にすべてを捧げてはいなかったんじゃないのかな、ということ。
バンドの目指していたものとジョーンズの探求していた音楽の一部が重なり「共闘」でレッド・ツェッペリンが生まれた。それは運命的で奇跡的だったけど、それ以上に彼が身を捧げていたのはまさしくバンドの「音楽」そのものなんじゃないのかな、と思うのです。
彼はバンド解散前も解散後もそれはもう驚くほどのどっぷりな音楽漬け。
現在なかなかの高齢なので心配になりますが、後進のバンドとかっこよくセッションしているのを見ると、彼の音楽への思いがひしひしと伝わってきます。しかもセッションジャンルも幅広い。
いつでも自然体で音楽と向き合い、ときにはチャーミングな魅力もあるジョーンズ。
クールに見えて音楽に対して消えない情熱を常に抱いているところ、そしてそれがとても自由でなにものにも縛られないスタイルであることに最高に魅かれます。
だから彼はわたしにとってスナフキンなのです。
とにかく音楽の才能がすごい
ジョーズの魅力は一言でいえば多才な音楽スキル。ここからはわたしが衝撃を受けた彼のすごさについてあげていきます。
堅実なプレイスタイル それは何でもできるから
ジョーンズのベースはよく堅実と言われますが、それ以上にパワーを秘めたサウンドに聞こえます。
確かに悪目立ちはしていないけど物凄い存在感があるし、彼がリズムを掌握して曲を進めているのがリスナーに自然と伝わります。ジャムセッションを1曲としてプロデュースしているような感じです。
鍵盤係の功績も含めると、ツェッペリンの音楽の多様性(ブルース、ファンク、プログレ、トラディショナル、中東系サウンド、ロックンロールなどなど…)は、彼がいなくては実現不可能だったともいえます。
とくに「幻惑されて」の冒頭のダウナーで沈むこむサウンド、「ブラックドッグ」のボーナムとのコンビネーションによる摩訶不思議なグルーヴ、「胸いっぱいの愛を」の堅実且つ厚みのある黄金比にハッとした人も多いはず。
今となっては有名だがこのリフはジョーンズ作。ボーカルと演奏隊を別拍子に分け、不思議な浮遊感と無骨さを両立させている。
ツェッペリンのなかでも長編の大作ですが、彼のベースラインを聞いているとあっという間に曲が終わってしまいます。
彼自身も言ってましたが、ジョーンズとボーナムの2人は音楽にリズムを乗せるのが非常に優れていたようです。ときにはメトロノームのように正確に、ときには型を崩し、ときには曲を先導して押し上げるパワープレイもこなし、それは二人のなかでまさしく阿吽の呼吸でした。
しかもこれが10分以上続くとなれば、やはり彼もモンスターだったのでしょう(知ってた)。
ちなみに私はモータウン調で古風なサウンドの「
いやまじでコンダクターじゃん……
楽器だって何でも弾ける
とくに弦/鍵盤楽器のマルチっぷりったらない。
Wikipediaではバイオグラフィーのプレイ楽器の欄が異様に長くて笑ってしまいます。ドブロもやればシタールもやる。かと思えばトリプルネックギターだって、とにかく様になります。
ジョーンズはベーシストのみの評価に固執しておらず、より多くの楽器の演奏技術を自負しています。まさしくプロのマルチプレイヤーなのです。
バンドへの貢献度がえぐい
ツェッペリンの魅力はハードであり神秘性があり圧倒的であること。
社会的メッセ―ジを含んだ曲はなく、いい意味で俗っぽさが見られません。黒魔術っぽさは感じられますが、それ以上に音楽観がぶっちぎりに突き抜けているのでジャンルの棲み分けも非常に困難です。
その「ジャンルレス」に大きな影響を与えたのがまさしくジョーンズ。
多くのセッションをこなし幅広い音楽の引き出しをもっていた彼のスキルは、バンドの音楽を大きく広く、そして深く前進させました。
ときにツェッペリンの音楽はクラシックにも聞こえるし、プログレにも聞こえ、ピュアなロックにもカントリーにも聞こえます。
音楽をここまでこねくり回しながら見事に調和させ、右脳にも左脳にも訴えかけてくるこのシステムこそツェッペリンの専売特許。まるで堅牢強固な鉄壁のようです。
結果的にツェッペリンの司令塔はペイジだったのかもしれないけれど、参謀長は間違いなくジョーンズだっただろうと思います。
これ何てジャンル…?初期には予想できないサウンドでも死角なしなのがツェッペリン。
ツェッペリンの前も後もすごい
ジョーンズはツェッペリンに合流する前からすでにセッション・ミュージシャンとしての才能が認められていました。
ローリング・ストーンズ、ミッシェル・ポルナレフ、ドノヴァン、ジェフ・ベック、ダスティ・スプリングフィールドなど、泣く子も真顔になるメンツです。
しかし、とくに彼がすごいのはバンド解散後。
ツェッペリンのメンバーのなかではもっとも精力的に音楽を続けています。(プラントはカントリーやトラディショナル分野ですごいけど)そこがまたいい。
R.E.M の「オートマティック・フォー・ザ・ピープル」にストリングスアレンジャーとして参加。
2003年のギターウォーズではひときわどぎつい音を鳴らして会場を沸かせる現役ぶり。年齢と風貌からは考えられない、ハードなイングリッシュ・ジェントルマンです。
ライヴ映像で圧倒的に見つからない
しかしこんなにかっこいいのに、ツェッペリン在籍時はひときわ目立たないのがジョーンズでした。
とくにライヴ映像では予想の1000倍ぐらい映らない。
なかでも1979年のカシミールのライブ。よりによってこれYOUTUBE公式です…トホホ。
しかもより問題なのは、この曲でということ。
これは数あるツェッペリンの曲でも、めずらしくジョーンズが主役の曲。このスコアであれば、ふつうは鍵盤奏者にスポットがあたっているはずです。
それがきちんと全身が映るどころか、見切れる時間も含めて圧倒的にジョーンズは映らない。映ったかと思えば手だけ…?
サポートメンバーだってもっと映るわ!!!
しかし、これほどの無体を与えられても、わたしが溜飲をさげられる唯一の理由は、「音」としての彼の存在感。これに尽きます。
さささ、目をとじてお聞きあれ!
このベースライン、そして鍵盤ラインは拝みたくなるほど圧倒的。それが分かっているから、わたしはまったくちっとも1ミリも
クヤシクナイ。
彼が微笑めば間違ってない音楽で賞
奥ゆかしく一見クールにも見えるジョーンズが、表情一つでファンを(わたしを)泣かせにきた映像がこれ。
ツェッペリンのアメリカ音楽への貢献を祝した祭典にて。オバマ元大統領とミシェル夫人もいます。
バンドを敬愛する一流のアーティストが集い、ラストの「
4:20 あたりからのジョーンズの表情にご注目。
魂から、聞き入っている………!教会音楽にも精通しているから、余計にゴスペルでくるものがあったのだろうか…
経験豊富なレジェンドにも関わらず未だになにかを掴もうと聞き入ってくれてる、あのお姿がなんとも有難くて……
たぶん彼はボーナムとの思い出があふれてきただけじゃなく、その邂逅も含めたツェッペリンの音楽、そして目の前の演者の音楽への姿勢を真正面から受けとめているんじゃないかな、と。
彼ほどの才能がある人(音楽がなにかを知っている人)に、音楽で微笑まれたら嬉しいでしょうね。自分のやってきたこと(音楽)は間違ってないんだという自信がもてそう。
やっぱりわたしにとってジョーンズは特別だということを思い知らされた1シーンでした。
ちなみに「
いつ何度聞いても感情がかきむしられ、未だにこの音の洪水と渦巻くパワーの受けとめ方が分からず圧倒されます。そしてそれが最高に心地いい。
月並みな表現だけど、年とったくちゃくちゃの顔のボーナムがこれをどんな表情で聞いたか見てみたかったな…
バンド解散後 音楽への情熱はいまだ濃く深く
前述のとおり、ジョーンズはその音楽の探求心ゆえに今でも精力的に活動を続けています。
とくにそれを広く証明したのが、彼のファーストアルバム「ZOOMA」です。
ツェッペリンサウンドはツェッペリンだけしかできないのは百も承知で、どう言えばいいか分からないけど…
ツェッペリン要素、強いよね……
解散後これも広く知られるようになったことですが、ツェッペリンが残した遺産ともいえる伝説のリフはペイジとジョーンズ、半々の割合でつくっていたようなのでさらに説得力があります。
さらに2009年には、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズを結成。
ジョシュ・オムとデイヴ・グロールがまぁまぁの同世代というのであれば、やっぱりジョーンズのスキルとパワフルさは異常。
もはや現役という言葉では例えられないほど、常に前進し模索し時代に反発せずに融けあってる。
三人とも音楽的探究心が強いこともあり、ジョーンズを最大級にリスペクトしている関係性も心地いい。やはり彼にはともに探求する仲間がよく似合います。
ハードでセンシティブで遠そうで近そうで…
そんな変幻自在の音楽を、創り、探求し、プレイするジョン・ポール・ジョーンズ。彼の次なる挑戦はきっとまたファンをおおいに驚かせてくれることでしょう。
そしてそれ以上にどうぞいつまでもお元気でいてください……