梅雨、あけませんね~。
とはいえ、私は雨音を聞くのはけっこう好きだったりします。雨の粒が地面に打たれ、跳ね返るまでの余白?余韻?みたいなものに、昔から惹かれます。
そしてその瞬間、悲しいのか虚無感なのか、自分の気持ちなのにしっかりと心に根をはっていない不思議な浮遊感に襲われることがあります。
もしかしたら、それは人がいう“センチメンタル”だったり“鬱”な感情なのかもしれません。
けれど私はこの浮遊感が嫌いではなくて、むしろ(自分のことなのに)もっともっと探ってみたい、と思ったりしています。
簡単にいうと私は、
気分屋で、感傷的。
8割は誠実で、2割は不誠実。
誰かのようになりたいと思ったことはないけれど、誰かの凄い才能を“私のまま”使いたい、と思うぐらいにはエゴイスト。
この世に正解なんてないと分かったふりをして、いつも答えを探ってる。
未だに「働くこと」も苦手だし、気を配ることと気にしぃの境界線が分からない。
何かを信じたい気持ちと信じたくない気持ちが常に追いかけっこしてる。
今回ご紹介するのは、そんな私の浮遊感でいっぱいになった心のポケットをぐるぐるしている音楽です。
- salem ilese - hey siri
- Christopher - A beautiful Life
- KOKIA - 大人のオオカミ
- Billie Eilish - What Was I Made For?
- Rachel Platten - Girls
- Nothing But Thieves - Broken Machine
- Gracie Abrams - Mess It Up
- 坂本真綾 - everywhere
- おわりに
salem ilese - hey siri
『Mad at Disny』の直接的な表現は共感しがたかったのだけど、この曲は音楽も素晴らしく、一気にお気に入りのぐるぐるソングになってしまった。
とくに“死ぬために生まれてきたとしか思えない”という歌詞は、ものすごく分かりやすくて悩んでいる人間にとっては直結するポイントで、危険だけれどこれ以上ないぐらいの共感性を感じてしまえる。この微妙な緊張感を保っているところが自分的には好みだった。
でもさ、みんな別に死ぬことだけに注視してるわけじゃないんだよね。
色々、この先楽しいことも良いこともあるだろうと分かっていて、それを経たうえで、やっぱりその先に死が待っているなら、それまでの価値観とどう向き合ったらいいのかな、っていう現代社会特有の「タイパ問題」のような葛藤を歌っているように感じる。
Siriに人生問答していること自体が無駄なことだって本人が一番分かってるのだろうけど、そうせずにいられない。
そんなところもいじらしいじゃないか。
Christopher - A beautiful Life
ネトフリドラマ『A Beautiful Life』の挿入曲。
歌詞が素晴らしすぎる。私、女性だし親でもないのに、この曲で歌われてる心情にすごく切なくなって、感動してしまった。
そうなんだよ。どんなに世間で「喜ばしいこと」「名誉なこと」と思われていることでも、例え本人が心の底からそう思っていたとしても、それって人生の「クラッシュ」に変わりはないんだと思う。それまでと世界が変わるなら、己の価値観が変わらざるをえないのなら、命の誕生でさえね。
でもきっと、そのクラッシュも眩んでしまうほど、愛とか絆とか希望ってやつは物凄いパワーをもっていて、私たちをいとも簡単にその大波に飲み込んでいく。それがきっと生きていくうえで私たちの美しい記憶になって、生きていこうとする意味の一つになっていくんだろうね。そしてきっと命を重ねるたびにその記憶も紡がれていくんだね。
ラスト、自分の娘の妊娠で数度目の人生のクラッシュに破顔しているだろうエピローグが、ほんとにほんとに美しい。
KOKIA - 大人のオオカミ
今年活動25周年を迎えるKOKIA。
心が苦しくなるのに一度聴いたら止められない、私にとって悪魔的に相性がいい曲で、初めて聴いたときはその衝撃にわんわんと泣いたものでした。
賢くて警戒心剥きだし。狂暴で孤高。でも遠吠えで仲間(誰か)の存在を定期的に感じようとしているオオカミ。
そんな誰の心にも自然と描写される映像と、大人のオオカミとつけ加え人間的な葛藤を被せているのが狂おしいほどに上手い。音楽の力を信じていることを隠さないKOKIAの曲のなかではかなり攻撃性の高い楽曲ですが、私にはマジで必要な曲。
KOKIAはヨーロッパにもファンが多くいるほど、美しくて幻想的な音楽を創る才能の持ち主。名曲ばかりなので、とくにケルト系やゲーム音楽などが好きな方はぜひチェックしてください。
Billie Eilish - What Was I Made For?
ビリー・アイリッシュの新曲。映画『Barbie』の挿入歌でよく聴いてます。
「あのバービーとシンクロする部分がビリーのなかにもあった」というのが、あって当たり前ではあるんんだけど、やっぱりこの表現にさすがだなと思ってしまった。
お互いに『創られたもの』として自覚のある二人の、たぶん求めているものが同じものだと想像すると感慨深かったりする。たぶん色はそうとう違うだろうけどね(笑)
ちなみに、数ある“Cause I…”というフレーズの歌い方のなかでこれが優勝かもしれん。祈りたいような許しを請いたいような歌い方がとても綺麗。このPVを見る限り、映画主演も出来そうな表現ですよね。なんかこう、ぐっときました。
Rachel Platten - Girls
昔から女性というものに考えを馳せることが多い。そしてそれは自分が女性だから、という理由だけではない気もしてる。
まだ「女性史」や「ジェンダー」という言葉ににスポットライトが当たっていない頃から、なぜか女性というものの性差や、どうして子どもは女性からしか生まれないのだろうという、科学的でも宗教的でもない問いに魅了されていた子供だった。このブログでも自然と女性アーティストの曲を紹介することが多くなってしまった気がする。
けれど、これは女性同士の連帯に興味があることとは違っていて、限りなく個人的で孤独で哲学的な思考だ。だから、いわゆるウーマン・パワーや#ミートゥーみたいな社会ムーブメントとは根本的に質感が違うことも自分で理解している。
女性の価値や使命。そういったものに興味があるのではなくて(なぜなら、それは“女性”ではくて“私”に投げかけられている問いだと思うから)、なぜ「女性」が存在していて、なぜ私は女性に生まれてきたのかという、「男性」や「クィア」と置き換えてもきっと成立するだろう疑問。
あまりに“ジェンダー”という言葉にピリついてしまった現代で、性差について言及するのは賢明ではないのかもしれない。
私はジェンダー・フリーな世の中がいいと思っているし、セクシャル・マイノリティの方たちと共存していきたい。けれどそれと同時に、前述した「なぜ?」を失いたくない人間でもある。
誰かを傷つけたり問題を膨らませたいわけでなく、ただ、ずっと探していきたいだけなんだ。
レイチェル・プラッテンと言えば、泣く子も黙る『ファイト・ソング』だが、そんな思考をもっている私には、この曲の方が何倍もファイト・ソングに聴こえた。
Nothing But Thieves - Broken Machine
NBTの曲もよもやここまで…?と思うほど私の精神的なイロイロと相性がいい。
最近の新作『Welcome to DCC』もすごく良かった。
この『Broken Machine』は自己修復までの葛藤や悩み、そして乗り越えようとする強さを表現していて、数あるNBTの曲のなかでもお気に入り。
全てではないんだけど、何となく哲学要素を含んだSF映画みたいな曲が多いんだよね。よく「粒子」とか「四次元」を彷彿するワードも出てくるし。
電気を通して、バッテリーを入れて、思考と感情の一進一退の攻防、そしてようやくエネルギーがつながった!=人間的な感情が蘇った!というときのエレキギターのエフェクトが最高。
修復までの一つ一つの作業は地味で際限なく思えても、そして他人から見ると「何をそんな簡単なことを」と言われてしまうようなことでも、その工程を疎かにしているとあとで必ずぶり返すし、何よりこの曲のようにいざ復活したときの「力強さ」が違うんだよな~。
Gracie Abrams - Mess It Up
最近のお気に入りの歌手、グレイシー・エイブラムス。とくにこの曲はPVが秀逸すぎて、鳥肌がたってしまった。
自分ではうまく言葉に出来なかったんだけど、コメントで的確に言語化している方がいて、そのコメント含めて傑作だった。
意訳すると、
私にとってケーキというのは他者にとって自分の最高である部分を捧げようとしている象徴なわけだが、最終的に彼女(PVの主人公)はその完璧な材料を使い果たしてしまう。
実際に問題なのは階段に何度も躓く自分の(本質的な)問題なのだけど、彼女はそれを「よくあるトラブル」だとしか思わず、何度も何度も自分をすり減らしてしまう。
そして最終的には、自分に残った本質的なものが相手に見合うものだと信じて、それを捧げるのみになる。
……おい、天才いたぞ、という感じである。
Mess It Up というタイトルは何も「何度失敗しても私、あの人のために頑張っちゃうの❤」というかわいらしさを表現しているわけでなく、もっと根深い問題であり、歌詞のように「人との距離を測りきれない自分の上手くいかない本質」を表現しているのだ。
それが善か悪かは分からない。気づいた方が本人は生きやすいのかもしれないが、それが罪なわけではないし、ただただ胸が切なくなるダブルミーニングな曲だ。
グレイシーはテイラーのツアーにも帯同していて(確かに彼女が好きそうな才能)今後さらにビッグになりそうな予感のする歌手なのである。
ニューアルバム『Good Riddance』も素晴らしいので、心がぐるぐるしている方は是非聴いてくださいね。
坂本真綾 - everywhere
今回のタイトルを決めようとしたときに、最初頭に浮かんだのが坂本真綾さんの『ポケットを空にして』だった。
ポケットを空にすることと、フルでぐるぐるしていることは状態的には真逆なのだけど、ストーリー的にはつながってるな、というところからテーマが大きく変化してしまった。
①ポケットに渦巻きすぎているから、②それらを空にして再出発しよう!という展開もアリなのだが、私はそのぐるぐるも引き連れて(自分の一部として)扱いたい性分なので、自然と最後に選曲したのもこの『everywhere』になった。
ぐるぐると旅は相性がいいと信じてる。確証もある。
とはいえ、まだまだ「愛されるために生まれてきたんだ」と言えるわけでなないけれど、大切な場所が増えていく感覚は分かりそうな大人になっていることをちょっとした救いにして、ブログ本文を終わりにしたいと思う。
おわりに
心のぐるぐるは自分が自分であるために必要な要素であって、例え全消ししてリセットすれば満足できるかと言われたら、実際そうでもないと思う。
ぐるぐるを受け入れて、自分の一部と扱えるようになって初めて「気分がいい」と思えるものだし、同じぐるぐるを引き連れている他者に気づけるものだ。
自己満足だろうが独りよがりだろうが、それをしないことには前に進めない。
だから、私は今日もちっぽけな自分とポケットの中の音楽を通じて、正直に対話したいと思う。
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ここまでお読みいただきありがとうございました!
今後も色々な音楽を聞いてブログに書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂けたら嬉しいです!
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