最近のMVはとにかく豪華なものが多いです。
CGアニメーション(頭悪い表現ですか…)の発達で、ほとんどの表現が可能になった一方、一発撮り上等!のような突発性を重視しているMVもあり、多岐にわたっています。
音楽の売上自体も、もはやMVの演出なしに大きなセールスは見込めないかもしれません。
ということで、芸術の秋。
せっかくだから「見る音楽」と称して、センス溢れる芸術性の高いMV10曲を勝手に選出いたしました。
もちろん音楽性もバッチリ!!
目と耳で、彼らの創造性を心ゆくまでお楽しみください。
- 1. Lana Del Rey ラナ・デル・レイ… Born To Die
- 2. Woodkid ウッド・キッド… Run Boy Run
- 3. Tabaah Ho Gaye - Kalank 挿入曲
- 4. BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」
- 5. Lamb ランブ… Wise Enough
- 6. Ed Sheeran エド・シーラン… Cross Me (feat. Chance The Rapper & PnB Rock)
- 7. Ariana Grande アリアナ・グランデ… God is a woman
- 8. Hoàng Thuỳ Linh
- 9. Eminem エミネム… Walk On Water
- 10. Katy Perry ケイティ・ペリー… Chained To The Rhythm (Official) ft. Skip Marley
- まとめ
1. Lana Del Rey ラナ・デル・レイ… Born To Die
わたしの記憶が正しければ、このデビュー当時彼女は「鬱版レディ・ガガ」と評されていたような…。
ラナの曲は毎回芸術性が高いですが、なかでもこのリードシングルはほぼショート・ムービーのようで完璧な世界観が表現されています。
60~70年代のクラシカルな雰囲気はラナの得意とするところ(というか、ほぼライフワーク)。そこに、刹那的な衝動・疾走感をとりいれ、タイトル曲の「死ぬために生まれてきた」という答えに帰結させるのがお見事。
すべてのカットが印象的ですが、扉をひらくシーンの美しさは涙が出るほど綺麗。
これまで見てきたなかで一番のお気に入りのMV。
2. Woodkid ウッド・キッド… Run Boy Run
フランスの映像作家ヨアン・ルモワンヌの音楽活動時の名義であるWOODKID。
ほかにケイティ・ペリーやリアーナ、前述のラナ・デル・レイのミュージックビデオの監督も務める売れっ子クリエイターです。
これはもう、さすが…と唸るしかない。
まずテーマにとったシーンが斬新。
白黒(というか微妙にセピア?)の画いっぱいを、一人の少年が無数のモンスターたちとひたすらに駆け、ある目的地にたどりつくまでを描きます。
そこには得も言われぬ興奮があって、とくにモンスターたちが次々に地中から生まれ出でるところなんて病みつきに。さらにラストで出現する巨大モンスターの誕生にいたっては、音楽を聞きながら叫びたくなるほどアドレナリンが放出されます!
三部作のうちの第二部。第一部・第三部も是非どうぞ。
3. Tabaah Ho Gaye - Kalank 挿入曲
わたし、今年に入って何度『Kalank』を記事にしてるんだろ…。
と、自分でもあきれてしまいますが、それぐらい美しさの宝庫であるボリウッド映画『Kalank』。
このMVの何が芸術かって、踊りの名手である女優マードゥーリの舞踊、これに尽きます。
もちろん音楽も衣装もダンスコレオも素敵なんですが、それを一人で軽く凌駕してしまうほど、彼女の踊り手としてのスキルが一番の芸術。とくに私は捻りの動きに見入ってしまう…
まじで、どこで一時停止しても絵になるってどゆこと…。
顔も美しく、演技も舞踊も美しいなんてすごすぎ。もはや存在が神です。
同じく、この難解な曲をかる~く歌ってしまうバックシンガーのシュレヤも神。
4. BUMP OF CHICKEN feat. HATSUNE MIKU「ray」
あぁ…そっちの芸術性?という声が聞こえてきそうですが、これも芸術センス高いと思う。このMVの存在がアートです。
音楽界のなかでボーカロイドの存在ってまだ賛否両論あるのかもしれないけど、今じゃ肯定派が多いんじゃないかな。そうであってほしい。
藤くん特有のボーカルスキルもあり、ミクちゃんの声、ふつうに目頭が熱くなります。コンピューターと人間のコラボをここまで違和感なくまとめられるの、素直にすごいよ。おそらくこれは、彼らがどんな創造性も否定しないということ、そして音楽の無限性を信じてるということの証なんじゃないかな。
ボーカロイドという「音楽仲間」を見つけたのが日本っていうのも、J-POPの誇るべき点だし、彼らと同じ歩みで音楽界をすすんでいけるのも心強いなって思います。
5. Lamb ランブ… Wise Enough
わたしはこういう退廃的で少々説教くさいテーマにアート性を見出すきらいがあります……。デストピア好きともいう。
一度見たら忘れられない、不可思議かつ強い攻撃性をもつテーマが素晴らしい。単に不気味なだけではなく一瞬一瞬を印象づける底力もあり、終始圧倒されてしまいます。
タイトルの「Wise Enough」のなんと秀逸なことか。中盤でマフィアが「緑」の裏取引きをしているところなんて、もう背筋ゾクゾクです。
一貫して主人公の演技がとってもうまくて、混乱から恐怖、うつろな視線、虚無な表情など、完璧に表現しているのもすごい。
6. Ed Sheeran エド・シーラン… Cross Me (feat. Chance The Rapper & PnB Rock)
近年見たなかでは一番CGをうまく駆使していて、それぞれのカットが強く印象に残るMVだと思った。
変にストーリー性を加えないことで(ラストはちょっとにおわせてますが)、映像と音楽のフィット感に集中できるのもいいな、と思います。
映画もそうですが、もはや映像世界で不可能はないのかな…?ワクワクするようなちょっとこわいような。
曲自体もかなりお洒落なので個人的にはもっと再生回数いっていいんじゃないかと思うぐらい。
エドの清廉なメロディーとチャンス・ザ・ラッパーのラップもうまく融合されていて、全体的にとても聞き心地がいい音楽です。
7. Ariana Grande アリアナ・グランデ… God is a woman
これをアートって安直??
いえいえ。もはやこの有名作品たちを引き連れ「神とは女」と周囲をはばからず歌うアリアナが芸術です。
マンチェスターの一件以来、間違いなくアリアナはこの時代をひっぱっていく歌手に成長。同世代のアーティストたちとも頭ひとつ抜けたような気がします。
時代の象徴になった彼女が、たとえ攻撃性があろうが多少の偏りがあろうが、メッセージ性を多く含む曲を歌うのは(これまでのアーティストがそうであったように)もはや必然。
この曲を含むアルバム『スウィートナー』では、その覚悟と心意気を披露してくれたように思え、素直に心強いと感じています。
8. Hoàng Thuỳ Linh
ヴェトナムの女性歌手。V-popでは以前から名のあるアーティストです。
最初の印象は古きよきC-pop。愛嬌のあるメロデイーと現代サウンドをミックスしたトラディショナル・ポップスのようでしたが、Bメロに入るとその印象は激変…!
ヴェトナム語、一言も分からないんですが、それでも「彼女がなにかを爆発的に伝えたがってる…!」と、MVを通していやでも分かるんです。
その直感のとおり、女性としてつらい過去を乗り越え、シーンに復活したというHoàng Thuỳ Linh 。
彼女自らがプロデュースに関わったというMVは、過去から現在という時間軸の鮮やかな切り替え、そして淡い色あいから極彩色、ネオンの色への対比など、細部にこだわりがあり「私に言わせて」というタイトルの世界観をしっかり支えています。
これからが楽しみなアーティストの一人です。
9. Eminem エミネム… Walk On Water
涙なしには見られないMVの一つ。芸事が孤独と苦しみの果てにあることをまざまざと見せつけます。
批評家には叩かれまくったアルバム『Revival』収録曲。その酷評とは真逆に、一般リスナーからはとても愛されているアルバムの一つです。
言葉に祝福され、同時に呪いを受けているかのようなエミネム。様々な闘いを繰り広げ、飲み込んで、吐き出し続けるエミネム。人より壮絶に苛烈に生きているのに、いつまでたっても瞳が少年のようなエミネム。
ラスト、ベストフレーズを書き上げたエミネムの表情が「やってやった」 とも「助かった」とも見えるのが印象的。ビヨンセの歌うパートもシンプルなのにとても美しいリリックで心に沁みます。
10. Katy Perry ケイティ・ペリー… Chained To The Rhythm (Official) ft. Skip Marley
メッセージ性、映像美、奇妙な “違和感”。 この全てのバランスがパーフェクト。
カオスな世界観のなか、中盤で投入されるスキップ・マーリーも、祖父譲りの明るいポジティヴが最高に違和感で、逆に神々しい印象を与えます。
ケイティ・ペリーは曲とMVのマッチングがとても上手いアーティスト。過去の『ET』や『Dark Horse』、そして新曲『 Never Really Over 』も、曲だけ・MVだけよりも、両者を合わせたときの起爆性がとても強いんです。音楽を聞き続け、MVを見続けることで、リスナーのなかで彼女の世界観が共有され、曲の解釈がより確固としたものになっていきます。
この『Chained To The Rhythm 』ですが、初見になんとなくマイケル・ジャクソンを彷思い出しました。それと同様に、彼女のMVの活用レベルは、もしかしたら相互作用的なものも含めてマイケルっぽいのかもしれません。
MVだけではなく The BRIT でのパフォーマンスも素晴らしかった1曲です。
まとめ
今回は新しめのものを中心に、アート性のあるMVを選んでみました。
MVはその曲の世界観やメッセージを伝えるためにとても有効な演出です。
音楽的な視点だとそれってどうなの?と思わなくもありませんが、「聞く音楽」から「見る音楽」に時代が変わっているのも否めません。
急速に情報化社会に拍車がかかっているなか、ひとめで分かる「音楽」は確かに便利かもしれないけれど、たまには一音一音をじっくり確かめるような音楽との向き合い方も楽しいものです。
なーんて、MVの存在意義とは相反するようなことも実感させてくれた芸術的MV。
みなんさんもお気にいりを見つけて、どっぷりとその世界観、そして音楽とMVの関係性にひたってみてくださいね。