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MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

自粛期間 音楽なに聞いた? Stay Home Music ② ~ダメ人間を一喝した曲たち~

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自粛期間…時間はあれど、正直に言えばわたしは何もやる気がおきませんでした。

 

何か学んだり日頃ためている趣味など、進んでいろいろとやれるような性格だったらよかったのですが、案の定世間の陰鬱さに飲み込まれ、思うように能動的に活動できなかったのです。実にネガティブ、実に生産性のないあきれた性分…。

せめて音楽ぐらいはブログの糧にでも…と曲探しをしようと思いましたが、それさえも現実のイロイロが頭の片隅によぎり思うように楽しめず。もちろんブログの筆も進みません。

かといって、世間様の役にたっているわけでもなく、疲労困憊で疲れているわけでもなく。本当に日がな一日不安がっているだけ。こうなってくると、この現実にではなく自分自身に嫌気がさしてきます。

 

今回ご紹介するのはそんなわたしに喝をいれてくれた曲たち。

ぼんやり成り行きで聞いた曲がほとんどですが、いきなり耳に飛び込んでくると萎んでいたわたしの目(耳?)をたたき起こしてくれました。熱の違いはあれど、すべての曲に「しゃんとせぇよ!」と怒られた気持ちになりました…

精神的にうだうだしていた人間をピシャリとやってくれた曲だから、それぞれのパワーもなかなか。前を向いて生活している人であれば、わたしの何倍も強くメッセージを発してくれるに違いのでおススメです! 

 

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ウルフルズバカサバイバー  男気のなかに見出す安心感

 

 

久しぶりに聞いた…。

ジャルジャルが好きなので、5月の畳み掛けるウルトラズ関連のコラボきっかけで。

 

ウルフルズに会わされるウルフルズに影響されてる奴』

 

そんなノリきっかけで聞き始めたわけですが、やっぱりウルフルズはすごかった。トースター松林も言ってたけど、ほんとこんな大人になりたい……。 

 

今回の件でつくづく感じたのが、不安と向かいあうには科学的証拠と感情的共感のどちらも必要ということ。

いろんな人から「大丈夫」「いやダメだ」と言われたところで、そこに科学的な証拠がなければ結局何一つ解決していないので不安は解消しません。

一方で、あるテレビ番組で強く印象に残ったことがありました。

100年前、今のわたしたちとおなじようにスぺイン風邪に立ち向かった先人たちを見て、わたしはものすごく心が励まされたのです。打つ手がなく、声が反映されることもなく、恐怖と日常を天秤にかけ生きていった名もなき民たち。まさに現在のわたしたちそのもので、同じ困難を生きているように感じました。100年という年月を経ても、同じような境遇におかれた者のつながりは強いんですね。

逆をいえば、同じく「大丈夫」「いや不安だ」と言いあったところで、同じくつらい立場同士でなければ、その言葉のパワーはいま一つ作用しないことでもあり…。

 

ウルフルズがわたしたちと同じ立場だとは思っていませんが、気持ちだけでも託したい…叫びを聞いてほしい…、と思わせる何かが彼らにはあります。

たとえいい加減だろうが馬鹿らしかろうが、曲全体から放出される男気に、無意識で安心感を探してしまう。そして彼らにそれを受けとめてくれる度量があることも、リスナーはちゃっかりわかっているのです。

案外100年前の日本でも同じようなパッションで国民からウケるんじゃないかな。実に、実にありがたいオジサンたちなのです。

 

期間限定デモバージョンで新曲も発表。

 

ウルフルズ…タタカエブリバディ (demo ver.)

 

コーラス以外はすべてトータス松本が担当。全員でのプレイも待ち遠しい1曲です。

歌詞がじーんと染みるなか、いきなりのレッチリでくすっと笑えるのも、さすがウルフルズ。ジャパニーズロック、ほんまおーきにです!

 

 

デュア・リパ Dua Lipa … ブレイク・マイ・ハート Break My Heart  過去と今をつなぐグラデーション・ミュージック

 

 

わたしにとって<以前期>と<今>をつなぐ、ちょうどグラデーション部分の曲。

実際の世界はこの頃すでに大変なことになっていたけど、画面のなかのデュア・リパは華やかで、色もたくさんで、人もいっぱいで…なんだか現実との乖離がすごすぎて見ていて一瞬くらっときてしまいました。

こんな世界がちゃんと存在していた…という事実を逆にガツンとつきつけられた感じ。ある意味目を覚まさせてくれました。単純にシンセ・ポップを聞く余裕がなかったので、久しぶりに何も考えず楽しく聞けたっていうのも大きいかもしれません。

 

個人的にデュア・リパは声が好き。いい具合のハスキーボイスで、高音を武器にしていないところも好感度が高いです。

 

デュア・リパも参加した BBC Radio 1 Stay Home Live Lounge もよかった。

 

Live Lounge Allstars - Times Like These (BBC Radio 1 Stay Home Live Lounge)

 

フー・ファイターズの「Times Like These」を豪華メンバーでカバー。数あるステイ・ホーム・ソングのなかでもとくにお気に入りです。

参加メンバーは、5・セカンズ・オブ・サマー、アン・マリー、バスティル、エリー・ゴールディングヘイリー・スタインフェルドパロマ・フェイス、リタ・オラ、サム・フェンダーショーン・ポールなど。もちろんフーもゲスト参加してます。

メンバーもすごいが、これだけのアーティストをこの状況下でうまくまとめたのもすごい。パートの割り当てやコーラスアレンジなど、ちゃんと曲としての統一感があって、サポートスタッフたちの手腕も光ります。ラップパートもさすがの仕上がり。ラストをしめくくるのがあえてクリス・マーティンというのも、なんだか洒落てますね。

 

今年の BBC Sound Of 2020 に選出されたセレステの姿もあります。目で見るだけでも楽しい1曲となっています。 

 

Celeste - Stop This Flame (Official Video)

 

 

クリスティーナ・アギレラ Christina Aguilera …'Can You Feel The Love Tonight' 力強くも慈愛にあふれるライオン・キングの名曲

 

ステイ・ホーム・ソングとして広く注目されたのが アメリカ abc 制作のディズニーソング特集です。

 

ディズニーと関連のあるアーティストが自宅から人気曲を熱唱。アリアナ・グランデ、トリー・ケリー、ルーク・エヴァンスなどが参加しており第二弾も配信されています。

なかでも、クリスティーナ・アギレラのパフォーマンスは圧巻でした。

 

Christina Aguilera Performs 'Can You Feel The Love Tonight' - The Disney Family Singalong

 

アギレラの一番のすごさはその表現力。それはフェイクやアレンジ、ロングトーンなどの技術的な表現力だけではありません。

 

この曲の肝はサビの転調。けれど、ここでアギレラは一切の転調を封じ、同じコードでラストまで歌いあげています。ディズニーのなかでも屈指の名曲なので、これまでも多くカバーされていますが、転調しなかったバージョンは聞いたことがありませんでした。

にも関わらず、じんわり心に染みわたるこの感情はなんでしょうか。very best の力強い頷きに、熱い気持ちがこみあげてくるのはなぜなんでしょうか…。

いつもはパワフルな歌唱で聞き手を先導していくアギレラですが、最近は「寄り添う歌唱」こそ彼女の真髄のようにも思えます。改めて力強さと慈愛は決してかけ離れたものではないということに気づかされます。

 

第二弾では『リメンバー・ミー』のスペイン語版を披露。

Miguel and Christina Aguilera Perform 'Remember Me' - The Disney Family Singalong: Volume II

 

ミゲルとの共演もスムーズで実に心地いい…!

以前からスペイン語のオリジナルアルバムに意欲をみせているアギレラ。<以後>の世界でも彼女の新作が待ち遠しいです。 

 

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同じくディズニー関連では懐かしい「ハイスクール・ミュージカル」のコラボ動画にも元気をもらいました。

 

High School Musical Cast Performs 'We're All In This Together' - The Disney Family Singalong

 

元気になるのでオリジナル版も。

 

これぞアメリカ!アメリカンティーン!

これは楽曲自体が「ディズニー純度100%」だからかもしれないけれど、どの角度をきりとっても完璧なティーン・ポップスで、たとえ一瞬でも清々しい気持ちになれました。歌詞も刺さるし、またこんなアメリカが見たい……。

それにしてもヴァネッサはほんとに年をとらない…なんてかわいいのか…。ここまで集まったなら是非ザックにも参加してほしかったなぁ! 

 

麒麟がくる』テーマ曲  2020年は大河の王道テーマで

 

これは冗談抜きで聞きまくってます。

 

麒麟がくる オープニング(そのままYouTubeにリンク)

 

戦国のどまんなか(信長・秀吉・家康の三英傑期)が舞台で、かつ光秀が主役であることを差し引いても、今回の大河の力の入れようには目を見張るものがあります。

とくに脚本・戦闘シーンがすごい。これらは過去作と比べても頭一つ抜けていると思います。各話すべてのエッセンスがラストの本能寺への布石として随所にちりばめられていまして、それが視聴者によくわかる。よくわかるのに全くいやらしくならず、ありのまま心に響くように作られているのです。

毎週のタイトルも素晴らしいです。「大きな国」には目頭が熱くなりました。

 

話がそれましたが、そこにこのテーマ曲です。

大河ドラマにこの言葉をつかっていいか不明ですが、この曲は実に<キャッチー>。大河ドラマアイドルソングともいえます。

重厚で荘厳ですが同じフレーズを何度も繰り返し、一度聞いたら忘れられません。突飛なフレーズの『真田丸』のテーマが変化球でのヒットだとしたら、これは間違いなく大河ドラマの王道曲でしょう。わたしは過去の『徳川家康』が頭をよぎりました。

作曲家がジョン・グラムなのも驚きでしたが、逆にこれが吉と出たのかも。外から見た<日本の戦国>は、よりストレートでまっすぐだったということではないでしょうか。

 

ジョン・グラム氏はこう語っています。

 

日本の“明智光秀”の物語は、冒険や挑戦や賭けや裏切りなどダイナミックな歴史的出来事に彩られていて、大変興味深いものです。もしシェイクスピアが同じ時代に生きていたなら、感銘のあまり筆をとり、悲劇の大作を世に残したことでしょう。

     NHK YouTubeチャンネル『麒麟がくる』オープニング映像 概要欄より

 

シェイクスピアが書く『光秀』、確かにこれは見てみたい…!

 

一部内容を短縮との報道もありますが、これは全話見たいというのが正直な気持ちです。光秀を放浪させ、多くの戦国人と触れさせたうえでの本能寺、という今大河の筋書きなら尚更。たとえ越年しても視聴者は離れないと思う…。

できるだけ長くこのテーマ曲をオンエアで堪能し、物語の光秀や戦国の人々に思いをはせたいものです。 

 

映画『モダン・タイムス』…スマイル   声を重ねるということ

 

 

チャップリンの名作『モダン・タイムス』より、今日まで愛されているナンバー。今回の危機にもレディ・ガガはじめ多くのアーティストがカバーしています。

これはベン・ブラム(右)が所属するアカペラグループのパフォーマンス。ベンはもう一人のペンタトニックスと言われる同グループのプロデューサーです。

ペンタトニックスにも通じる原曲のよさを損なわないアレンジや、オリジナルの世界感への敬意はさすが。まるでこの音楽をバックに、チャップリンの背中がヒロインとともに画面遠くへ消えていく、あのエンディングが目に浮かぶようです。素朴で慎ましく、あたたかみのある人間本来の美しさを優しく歌い上げています。

 

チャップリンの原曲に歌詞をつけたナット・キング・コール版も、今の世の中にとても優しい1曲。

 

Nat King Cole Smile (Remastered)

 

このアカペラを聞いて、わたしは少しばかり胸がしめつけられる思いがしました。 

球児が置かれた現状同様、合唱に携わる子供どもたちは何を思っているだろう、と。合唱は声も出すし、距離も近く、屋内での活動がどうしても多くなります。しばらくはまともに歌えない日々が続くのかもしれません。

もちろんやり方はたくさんあるでしょう。リモートであれ、屋外であれ、時が解決することもあるかもしれません。

けれど、同じ空間で<声を重ねる>という行為は、より人の心を強くします。本来なら、合唱はこういうときにこそパワーを発揮する音楽のはず。横の、前の、後ろのメンバーの息遣いを感じながら、自らが音を紡ぎ、溶け込み、一つの曲へと一体化していく…。これはとても繊細な行為で、だからこそ他者を認めるという貴重な経験にもなります。

 

何もできず歯がゆいばかりですが、ベストな環境でなくとも、年に一度の目指す目標への道が断たれても、たとえ一人きりだったとしても、歌うことはやめずにいてほしい。「声を重ねる」という素晴らしさを知っているだけで、人生がより豊かになることは疑いようのない事実ですからね…

 

おわりに

 

有事のときこそ人はどっしりとした音楽を欲しやすいものです。情感に浸り、気持ちを鼓舞させ、耐え忍ぶために、音楽は必要とされます。現状を打開するため、それはごく自然のことでもあるでしょう。

音楽シーンではロックの再来もあるかもしれない。そうなれば怒りや不満、生きていくための叫びが、世界中で歌われることになります。人々の熱を受け入れてくれる音楽という器が必要になるからです。

けれど同時に、音楽は人を助け、ともに生きていく存在だということも、わたしたちは忘れてはいけません。聞き手が正気を失い、音楽に「力」だけを求めては、音楽から色や輝きは失われてしまいます。

 

…などとたいそうなことを考えつつ、何も動かない自分を叱咤する毎日は続く…。

わたしに「これから」を語る資格はありませんが、せめて今を生ききれるよう背筋を伸ばすことから始めなければ。そして、音楽が生みだされる喜び、聞ける喜び、そして音楽が街中に流れる幸せをかみしめながら生きていこうと思います。