クリスマスにあたたかな彩りを加える珠玉のクリスマスソング。
名曲たちは長い年月が経った今でも色褪せず、私たちを時に懐かしく、時に感傷的な気持ちにさせます。
今回はそんなクリスマスのスタンダードナンバーを【新旧アーティスト】で聞き比べてみました。
昨年に引き続き心も体も何かと忙しない年の瀬ですが、往年のクリスマスソングを聞きながら、たゆたゆと流れる時の流れを感じて頂けたら嬉しいです。
クリスマスの定番ソングを聞き比べてみよう
White Christmas
Bing Crosby ver.
クリスマスソングの帝王、Bing Crosby ビング・クロスビー。
第二次世界大戦中の1942年に発売されたこの曲は、全世界で4500万枚も売り上げ、彼の存在感を確固たるものにしました。
作詞作曲はベラルーシ出身の Irving Berlin アーヴィング・バーリン。
アメリカを代表する音楽家でロジャース&ハマースタインとも親交が。
▼ロジャース&ハマースタインについてはこちらの記事で書いています。
アメリカ第二の国歌と言われる「God Bless America」も彼の作品。
旧ロシア領で生まれユダヤ教の家で育ち、アメリカ音楽の巨匠となったアーヴィング。彼の人生を思いながら聞くと、今までとはまた違う深みを感じます。
Imagine Dragons ver.
意外すぎるカバーアーティストですんません(笑)
数ある名カバーのなか、あえてイマジン・ドラゴンズを選んだ理由は(映像はさておき)オリジナルの優雅さと余裕ある声の深みを最も感じられたからです。
ホワイトクリスマスとなると、歌う方も聞く方も「品よく聞かなきゃ」と思ってしまうものですが、そもそもはコメディーミュージカルから生まれた曲なのであまり肩肘はらずに聞くのもそれはそれで乙なものかと。
It’s the Most Wonderful Time
Andy Williams ver.
クリスマスのテンションを一気にあげてくれる名曲。
歌うのはアメリカを代表するポピュラー歌手の一人 Andy Williams アンディ・ウィリアムス です。
歌詞にあるとおり「一年で一番素晴らしい日!」「とにかくワクワクする!」そんな気持ちを抑えられないハッピー全開の曲。
作詞作曲はエドワード・ポラとジョージ・ワイル。1963年にリリースされました。
『アンディ・ウィリアムス・ショー』は日本でも放送され人気となり、過去には紅白に出演したこともあります。
▼アンディ・ウィリアムス・ショーで歌う It’s the Most Wonderful Time
スポットライト一つという超絶シンプルな舞台で一礼しただけなのにこの凄み…
ちなみに『ムーン・リバー』もこの方の代表作です。
PENTATONIX ver.
PENTATONIX版はこの曲の賑やかさをアカペラの強みである重奏で表現し、オリジナルに忠実な雰囲気を再現しています。
キーは下げていますがコーラスパートの華やかさを加えることで、オリジナルの気品はそのままに楽しい仕上がりとなっている一曲です。
数あるPENTATONIXのクリスマスアルバムでも、この曲が収録されたアルバムはとくにおススメ。
Have Yourself A Merry Little Christmas
Frank Sinatra ver.
“ささやかで素敵なクリスマスになりますように…”
そんな静かで大切なメッセージがこもっている優しいクリスマスソング。筆者が最も好きな曲です。
ジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画『若草の頃』のなかで歌われたスタンダードナンバー。
劇中ではジュディ・ガーランドによって歌われますが、一般的にはフランク・シナトラのバージョンが有名です。
エンターテイナーの第一線で活躍し、後世の音楽人にも多大な影響を与えた音楽界の至宝と言える存在のシナトラ。
声をはりあげず朗々と詩を紡ぐ歌唱は、聞き手の気持ちを繊細に、そして穏やかにしてくれます。
そんな相反する感情をうまくコントロールして聞かせるのもシナトラの歌唱の凄さ。
実はこの曲、ジュディ・ガーランド版とシナトラ含むそれ以降のポピュラーソング版で歌詞が大幅に変更されているようです。
その理由はジュディ版の歌詞があまりに暗かったから。(最後のクリスマスになるかもしれないから、この時をかみしめて楽しもう…みたいな温度感だったらしい)
▼こちらのブログではとても丁寧な解説でこの歌詞について書かれているので、興味を持たれた方はぜひ。
Darren Criss ver.
glee への出演でも知られる俳優/歌手の Darren Criss ダレン・クリス。
ギター1本とシンプルなハーモニーで歌われるこちらのバージョンは、まさにこの曲の「ささやかさ」を表現しているようで耳に優しく響きます。
ダレンのクリスマスアルバムは、今年リリースしたクリスマス関連アルバムのなかでも、とくにおススメしたい一枚。
華美な音や衒いのないシンプルな構成で、落ち着いたクリスマスソングを聞くのに良質な曲がそろっています。
It's Beginning to Look a Lot Like Christmas
Perry Como ver.
1951年にメレディス・ウィルソンによって書かれたクリスマスナンバー。
クリスマスソングとして有名だけど真っ先に思い出すかというとそうでもない…という奥ゆかしい立ち位置も好きです。「クリスマスソングの隣人」って感じ。
代表的なのは Perry Como ペリー・コモとThe Fontane Sisters フォンテーン・シスターズによって歌われたバージョン。
ペリー・コモは前述のシナトラと双璧を成すアメリカ屈指のエンターティナーで、多くの歴史に残る名曲を歌っています。
ディズニー映画『シンデレラ』の挿入曲「夢はひそかに」「ビビディ・バビディ・ブー」なども担当。
誠実な中にもどこかしら楽観的な響きが残る歌唱が特徴的です。
Meghan Trainor ver.
メーガンのカバー、この脱力感がとてもいいんです。
自身の記念すべきデビューアルバムさえも、タイトルのアイディアが思いつかなかったから『TITLE』にしたというメーガン。
そんな彼女の執着をみせないスタイルが、この曲とも相性がいいのではないかと思いました。
2020年にリリースしたクリスマスアルバムも程よく気の抜ける(笑)曲が収録されていて、クリスマスBGMとしても重宝します。
Let It Snow! Let it Snow! Let it Snow!
Frank Sinatra ver.
作詞 Sammy Chan サミュエル・カーン と 作曲 Jule Styne ジュール・スタインで1945年にリリース。
1950年にシナトラ版、続く1959年に Dean Martin ディーン・マーティン 版がヒットしました。
私はシナトラ版を聞いてきたのでどうしても好みが偏ってしまいますが、マーティン版はより軽めなので聞きやすいかもしれません。
1945年は終戦を迎え、アメリカの大衆文化は明るく華やかなムードのある作品が多くなります。
降るなら降れ!という半ばヤケクソ的な歌詞も、この曲では上品に聞こえてくるのが何ともシナトラマジック。
Jamie Cullum ver.
ほんの少し手放し気味に歌っているのがオリジナルっぽくていいな、と思います。
この曲はほかの曲と比べて「遊び」の部分が多いので、ジャズシンガーのジェイミー・カラム版ともよく合います。
船上のピアニストをしていたということもあり、行き交う人の流れやどこかへ向かう物・コトを見つめる観察眼はジェイミーの得意分野。
ジャズのクリスマスアルバムではかなりお気に入りの一枚です。
あとがき
2020年のパンデミックの中、
往年のアーティスト(の公式チャンネル)は、クリスマスのヒットソングを現代のアニメーションによせて続々と公開し始めました。
明るく、穏やかで、誰でも口ずさめるようなクリスマスの定番ソング。
けれど、聞いていてどこか切なく感傷的になってしまうのは、
作り手や歌い手の彼ら自身が、1940年代という激動の時代を生きていたからだと思います。
そして、比べることはできないけれど、
間違いなくそれまでの日常とは違う悲しみに暮れた私たちにも、
彼らの音楽は必要だったのかもしれません。
年に一度のクリスマス。
音楽を聞きながらそれぞれの時代の、それぞれのクリスマスに思いを巡らせると、
やはり私は
“Have Yourself A Merry Little Christmas”
この歌詞が心にじーんと染み渡る、
そんな気持ちになるのです。
▶そのほかのクリスマスミュージックについてはこちら
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ここまでお読みいただきありがとうございました!
今後も色々な音楽を聞いてブログに書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂けたら嬉しいです!
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