最近、SIMI(シミ)の音楽を聞いています。
ブラックアウト・チューズディを皮切りに、いわゆるブラック・ミュージック(この表現も本当はよろしくない…)への見方が熱を帯びている今日。
世界は動き続けているわけですが、シミの音楽をきいていると、人間の歴史にかかわらず「音楽はいつも変わらず在るもの」だと実感します。
今回は、そんな癒しと悟りを同時にくれる、ナイジェリア音楽界の注目シンガーSIMI(シミ)についておブログ。自然の優しさと人の優しさを重ね合わせた彼女の音楽は、今の時代に必聴です。
SIMI(シミ)…ナイジェリア音楽 異色のシンガーソングライター
ここ数年ナイジェリア音楽が熱い。
WizKidとドレイクの共演を皮切りに、ナイジェリアサウンドが世界のメイン・ストリームにも次々と影響を与えています。
そんなナイジェリア音楽で、一際異彩を放つのがシンガー・ソングライターのSIMI(シミ)です。
シミはナイジェリアの首都ラゴスにあるスルレレ出身。
ラゴスはアフリカのニューヨークともいわれる勢いのある都市で、カイロに並ぶメガ・シティ。最近ではアフリカの音楽シーンはラゴスを中心に動いているほど、クリエイティヴかつエネルギッシュな街です。
シミはゴスペルシンガーとしてキャリアをスタートさせ、2008年にはデュエットアルバム『Ogaju』をリリース。
この頃から軽やかでやわらかな歌唱は変わりませんね。
その後、2014年にリリースしたシングル「Tiff」が大きな注目を集めます。
ラストに近づくにつれアフリカン・ビートが高らかに鳴りわたり、切ない緊張感を軽やかに包んでいきます。この音楽全体の舵捌きが実にお見事です。
この曲は2015年の Headies(ナイジェリアのヒップホップ界の音楽賞)にもノミネートされ、翌2016年にはナイジェリア・エンターテイメント・アワードも受賞。
続く『Jumb Question』も高い支持をえて、瞬く間にナイジェリア音楽界のスターダムをかけのぼっていきます。
きりっとしたメイクもかわいいですね。
また、セカンドアルバム『Simisola』からは、部族間の対立をうたった「Love Dont Care」をリリース。
大らかな曲展開のなか、繊細なリズムが幾重にも重なるストレス・フリーな1曲。淡々と歌うようでしっかりと個性が光るシミの歌声も素晴らしいです。
愛はなにも問題にしない―――
このメッセージは好意的に捉えられ、彼女に対する関心もさらに高まりました。
2019年にはセカンドアルバム『Omo Charlie Champagne, Vol. 1』をリリースしています。
多彩な音楽性とフューチャリング
シミの音楽は、ジャンルでいえば、アフロ・ポップ(この表現も今後アウトかも)、R&B、ムーンバートンに近いかもしれませんが、いわゆるナイジェリアン・ミュージックとは少し違うかもしれません。
女性のシンガー・ソングライター独特の目線があり、軽やかな歌声もあいまって流行に左右されない、しなやかな音楽性があります。
そんな彼女の音楽性のなせる技なのか、そのフューチャリング相手も多岐にとんでいます。
Falz はよくシミをフューチャリングしています。一見無骨に聞こえるラップパートもシミの声でよりカラフルになっていますね。
カラフルなイメージにも関わらず繊細なハーモニーを駆使することにより、ノスタルジーさも加わったオシャレな1曲。
単なるナイジェリアとメインストリームのクロス・オーバーだけでない、新たな音楽性を感じます。
そして忘れちゃいけないのが、この
幸せになれる音楽きいて深呼吸しよう
先日、カントリーバンドのレディ・アンテベラムが、南北戦争以前の奴隷制度を彷彿とさせるという理由で、バンド名を「レディ・A」に改名しました。個人的に、とうとうここまできたか…!と驚かされたニュースです。
Black Lives Matter への葛藤は前回書いたとおりなんですが、その後も飛びこんでくるニュースを見るたびに、そのスピードとパワーに驚かされます。
差別は論外ですが、一人一人の「個性」をどこまで守るか。個性を尊重したいはずなのに、同化の強制では元も子もないからね…。
いつの日か、全員ブラックをルーツにもつバンドが、アメリカン・カントリー・ミュージック・アワードを受賞したら、少し現状も変化しているんでしょうか。
けれどシミの音楽を聞いていると、音楽はただ存在しているだけでも心を幸せにしてくれるものだと実感します。たとえそこに「意味」をもたせずとも、わたしたちの心を動かしてくれるものなんです。わたしは久しぶりに深く深呼吸できたような気分になりました。
たまには肩の力を抜いて、音楽を「音」として楽しむのも大切なのかもしれませんね。