2020年の中頃からジワジワとムーヴメントになった曲があります。
それが “Jerusalema(Master KG Feat.Nomcebo)” です。
Master KG - Jerusalema [Feat. Nomcebo] (Official Music Video)
実際は2019年末にリリースされた曲ですが、翌年のコロナ禍のなか2020年の秋頃にはアフリカ、西ヨーロッパ、アメリカなど、キリスト教圏において再度注目を集めます。
なかでもそれに一役買ったのが、こちらの動画。所謂踊ってみた動画です。
Jerusalem Dance Challenge, Fenomenos do Semba, Master KG [Feat. Nomcebo]
食事を落とさず軽やかにステップを踏むところがかわいらしい。何気ない日常のシーンからお皿を片手に集まってくるところ、何とも言えないセンスを感じます(サングラスの女の子、かっこいい)。
コロナ禍の憂いを晴らすような軽やかなダンスが人気となり“ Dance Challenge”へと発展。今では一般市民から大企業までが参加する大人気の「踊ってみた」動画になっています。
今回はそんな Jerusalema Dance Challenge についてご紹介しながら、そこから垣間見える世界の今を見つめていきたいと思います。
Jerusalema(ジェルサレマ)とは
Jerusalema は2019年にMaster KGによってリリースされました。
“Jerusalema”(ジェルサレマ)とあるように、救いの地へ祈りを歌った曲です。
厳しい歌詞(言葉自体はシンプルですが)が続きますが、曲調はあくまで明るく爽やかという、ゴスペルをベースにしたサウンドとなっています。
Master KGは2016年から活動している南アフリカ出身の歌手/DJ/音楽プロデューサーで、AFRIMA(All Africa Music Awards)でも受賞歴をもつ話題の音楽家です。
一方、慈愛あふれる深い声が特徴の Nomcebo Zikode も南アフリカ出身のシンガーソングライター。
2005年から活動し、ほかにDj Ganyaniと共演した“Emazulwini”をヒットさせています。
この曲もスタイリッシュで気に入っています。
世界の Jerusalema Dance Challenge
この Jerusalema Dance Challengeが話題となっている地域は、イスラエル、オランダ、ポルトガル、イタリア、スペイン、フランス、ジャマイカ、カナダ、アメリカなど多岐にわたり、多くの国、そして多くの職種の人たちによって披露されています。
とくにコロナにおいて苛酷を極める業界のダンスチャレンジは、見ているだけで胸が熱くなるものがあり、励まされながらも色々と考えさせられたので、こちらで紹介させていただきたいなと思いました。
旅行業界
企業のダンスチャレンジのなかで筆頭にくる動画で、再生回数もダントツです。
西欧圏でのムーブメントの熱さについて触れましたが、なかでもドイツ語圏での動きが目立ちます、やはりカトリック文化との関係が深いのかもしれません。
シュトゥットガルト空港。
staySTRongという言葉も胸に響きます。
2020年現在、非日常(コロナ)VS 非日常(旅行/エンタメ/余暇サービス業)という構図ができあがってしまい、それは仕方のないことではあるのだけれど、今一度心に留めておきたいなと思ったことがあります。
それは旅も音楽もそれぞれの楽しみも、これらは決して非日常ではなかったし、これからも非日常になんかならないということです。
日常的に互いの国を跨ぐことができ、互いの国の言葉を交わせることは、とても尊いからこそ、それを当然のこととして持続できる社会にしなければなりませんよね…
せっかく長い歴史をかけ多くの摩擦を乗り越えて、人々が交じりあった世界や価値観をとめてはいけない。
そんなことを気づかせてくれた心強い動画でした。
サービス業
メルセデスベンツ from Orlando
Orlando Jerusalema Dance Challenge
企業動画は戦略やPRなども頭をよぎるものですが、物欲がほとんどない私でもこれを見て「一生に一度はベンツにのってみたいかも…」と思ってしまったぐらいなので、きっと絶大な効果があるでしょう(笑)
現実問題それは無理だとしても、コロナ禍があけたらオーランドの街をレンタカーでドライブしてみたいものです。
それにしても、西欧圏の人たちが当然のようにマスクをつけているのを見て、改めて胸が切なくなるのは私だけでしょうか。
科学的に正しいことなのでぜひコロナ禍では続けて頂きたいんですが、この光景こそが異常事態を物語っているようで、ふとした瞬間にハッ…としてしまいます。
医療・公共職
Radbouumc(オランダの大学医療センター)
Jerusalema challenge | Radboudumc
St.Barbara-Klinik(ドイツの病院)
#ZusammenGemeinsamWir - Jerusalema in der St. Barbara-Klinik Hamm GmbH #barbarajosefhamm
Jerusalema Dance Challengeでは非常に多くの医療・消防・警察など、いわゆる公共に携わる職種の人たちも動画をあげています
今回は公式のみをとりあげていますが、YouTubeでは警察や消防など各国バラエティーに富んだダンスが見られます。
とくに医療関係者たちの映像はやはり胸にこみあげてくるものがあり、月並みな表現ではありますが、心の底から「共にがんばろう」という気持ちになれます。
私たちの日常を全力で守ってくれる方たちに感謝しつつ、この方たちの前向きなステップで励まされるのが不思議ですね(でも練習したんだろうな…)。
そのほか
Ndlovu Youth Choir - Jerusalema Dance Challenge
筆者の好きな南アフリカのコーラスグループ
さすがの歌声とアレンジ。聞いているだけで体が動いちゃいますね。あ~至福!
彼らは過去にAGTにも出演。詳しくはこちらで紹介しています。
Jerusalema Baby Challenge - Dance With Ergobaby - Dance Challenge Master KG - Baby Daddy Dance
とあるフィットネスクラブのチャンネルより。
数あるダンスチャレンジのなかでも、個人的に好きな動画。ただただ癒されます。
パパさんダンス、さすがのグルーヴです!
JERUSALEMA Cape Town Philharmonic Orchestra & Jazzart Dance Theatre
Cape Town Philharmonic Orchestra は1914年から続く南アフリカの管弦楽団です。
オリジナルのサンプリングに程よく付け加えたオケサウンドがあったかい。自由で爽快な雰囲気もたまらなく、このバージョンでも何度もリピートしたくなります。
おわりに
今回まるまる一つの記事を“Jerusalema”一曲に費やすという、ある意味暴挙のような記事構成になってしまいました。
けれどこのダンスチャレンジは、筆者がとても心を動かされたムーヴメントであり、なかなか日本では伝わりにくい文化圏ならではの良さも出ていると思います。
カトリック圏をベースに広がった動きなので、日本やアジア界隈ではなかなか耳にしにくい現象かもしれませんが、“世界ではどんな人たちがどんなものに心を動かされているのか“を知ることはとても価値あることだと思い、今回こうしてご紹介させていただきました。ちなみに日本では名古屋ヒルトン参加しています。
わたしはこれらの動画を見て“つらい時こそ前を向く”というのは綺麗事でもなんでもなく、人間に備わった生きる知恵なのではないかと考えるようになりました。
踊ったからといって何かが解決できるわけではないけれど、「何かの希望を見たい」「誰かの希望になりたい」という人が溢れているこの時代に、このムーヴメントは決して意味のないことではないと感じるのです。
皆さんは何を感じましたでしょうか。
お時間あるときにでも「見て」「聞いて」、世界各国で生きる人たちが感じている何かを、今いる場所で感じて頂けたら嬉しいなと思います。
そして「こればかり聞かされてJerusalema がゲシュタルト崩壊しそうだよ!」という方、本当にすみません…