Brandy ブランディー が、ディズニープリンセスの勇気と優しさをテーマにしたプロジェクト Ultimate Princess Celebratin のテーマ曲を担当しています。
ディズニーなので下手なことはしないと分かっていながらも、この曲を聞いた筆者は自分で思った以上に感動してしまいました。
◆Brandy-Starting Now
ディズニーファンでなくとも随所に各主題歌のキーフレーズがちりばめられていて、聴いているだけで感動的なストーリーの数々が浮かんできますね。
しかしなぜ今、新たなテーマソングに Brandy が起用されたのか。
気になって調べてみるとそのストーリーにいろいろな思いが去来したので、改めてこちらにまとめていきたいと思います。
▼以下、こちらの記事を参考にさせていただきました。
オルタナR&Bシンガーの実力者 Brandy
1994年に『Brandy』でデビュー。このアルバムは全世界で600万のセールスを売り上げ注目を浴びます。
さらに、当時世紀のディーバとして確固たる地位を築いていた
Whitney Houston ホイットニー・ヒューストン の映画主演作『ため息つかせて』(原題:Wating To Exhale)のサントラへ『Sittin’Up In My Room』で参加。
◆Brandy-Sittin’Up In My Room
なんて聞き心地のよいハスキー&シルキーボイス!
ホイットニーは前作『ボディー・ガード』でもサントラアルバムを大ヒットさせており、その次回作ということでサントラ制作にも力が入っていたなかの大抜擢でした。
1996年には社会派ドラマ『moesha』に主演。
このドラマは黒人コミュニティー以外の視聴者の人気も得て第6シーズン(!)まで続きました。
そしてなんといっても彼女の大ヒット曲といえば、
Monica モニカ と共演(という名の競演)した『The Boy Is Mine』。
◆Brandy & Monica - The Boy Is Mine
ブランディーと同じく天才シンガーとして人気だったモニカとの共演は話題となり、ヒットチャート18週連続1位、年間シングルチャート2位という快挙も成し遂げました。
またこの曲を収録したアルバム『Never Say Never』では「Have You Ever」のヒットも生まれています。
◆Brandy- Have You Ever
The Boy Is Mine と並ぶ彼女の代名詞的ナンバー。スローミディアムなテンポに流れる彼女のシルキーボイスがたまらない。
これ以降もブランディーは着実にキャリアを重ね、今ではオルタナR&Bアーティストの代表格と言える存在になっています。
ブランディーとシンデレラ、受け継がれるホイットニーの思い
1997年、ブランディーはウォルト・ディズニー・テレビジョンとホイットニー&ABC局が共同制作した
Rodgers&Hammerstein ロジャース&ハマースタイン版の『シンデレラ』において主演を果たします。
当時、時代のアイコンとして人種間を問わず影響力のあったホイットニー。
“自分と同じような外見の少女たちに夢を与えたい”との悲願から 『黒人主演のシンデレラ』制作にあたったと言われています。
当初は自身がシンデレラ役だったそうですが年齢からその座を降り、若さあふれる新進気鋭のブランディーにホイットニー自身が白羽の矢をあてたそうです。
いかにホイットニーが彼女の才能に惹かれ、信頼していたかがわかるエピソードですね。
ちなみにホイットニーはフェアリー・ゴッド・マザーとして登場。最高か。
この作品ではプリンスにフィリピン系、いじわるな継母姉には白人と黒人を起用するなど画期的なキャスティングが試みられていて
作品に対するホイットニーと制作陣の熱い思いが伝わります。
こちらの作品アメリカでは2021年2月からディズニープラスで視聴可能となっています(日本公開は未定)。
劇中では二人の歌唱も見どころです。
今は亡き世紀の歌姫が次世代に何を願い、何を託したのかを感じとることができる、歴史的な作品。
公開となったらぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。
▼ Rodgers&Hammersteinについての記事はこちら
しなやかに壁を越えていく歌声
さらに筆者がブランディーの抜擢に注目したのは、その声でした。
彼女の声は決して押しが強くなく、いつ聞いても軽やかでしなやかです。
と同時に、決してその芯はぶれず時代を生き抜いてきた強さ、賢さ、輝き、そしてチャーミングな魅力であふれています。
筆者はこのしなやかな歌声にディズニープリンセスの魅力が投影されているような気がしてなりません。
パワーをふりしぼって勝利する物語もいいけれど、軽やかに壁を越えるかのごとく勝利という概念を越えていく姿もまた美しい。
Todrick Hall トドリック・ホールとコラボしたシンデレラメドレーでも、その変わらぬ声を聞いていると、ふとそんな思いがよぎります。
◆Cinderella Medley by Todrick - Starring Brandy
1997年版キャストもちょっぴり参加の何とも豪華なメドレー。
大先輩なのにブランディーの チャーミングな演技もさすが。まるでかつてのホイットニーのようで、見ているこちらも胸が熱くなります。
プリンセスへの憧れは少女や女性だけのものじゃない
ディズニー作品に 能動的ヒロイン が登場してからしばらく経ち、それが当たり前となった現在。
それと同時にジェンダーや人種間の議論もより熱を帯びてきています。
けれどなかには、
「あの人たちのことばっかり!」「私たちは声をあげちゃだめなの!?」
と、あちらを立てればこちらが立たぬ状態も。
そんな本来の議題から大きくはずれてしまった声もよく聞きます。
もしかしたらこのプリンセスプロジェクトに関しても「フェミニズムの一部じゃん」と誤解している人もいるかもしれません。
けれど、そもそもこうした movement は自分たちが目立ちたいからではなく、認め合うことを最大の目的とした動きであるはずです。
そして、プリンセスのしなやかな強さは他者をなぎ倒すような強さじゃない。
周囲を認め、自分を認め、悪循環を断ち切り前へ進む。
そんな彼女たちの姿に憧れる理由は、もはやジェンダーや肌の色などでは一括りにできない、人生の信条のような大きくて広い視点から由来するはずなのです。
だからこそこの Ultimate Princess Celebratin は少女や女性だけではなく多くの人の啓蒙の一環になるはずで、
さらに言えば、どんな脇役のストーリーでも、そしてこれまで通りヒーローたちの物語が「新たに」語られても(実際ヒーローにはヒーローの苦難があった)、
それは歓迎されるべきで喜ばしいことだとも思うのです。
「みんなが主役」というのは月並みな言葉だけれど、
今後もディズニーには懸命に生きている人たちが自分自身を投影できるような、そんな存在に次々とスポットライトが当たる作品を、
文字通り“すべての壁を越えて”作り続けていってほしい。
ホイットニーからブランディーに受け継がれる歌声に、そんな気持ちを覚えたお話でした。
Thank You For Reading.
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