ano の音楽はぜひヘッドホンを付けて爆音で。
もうずっと、若者の鬱ロックが鳴りやまない。
amazarashi の『僕が死のうと思ったのは』、あいみょんの『生きていたんだよな』、まふまふの『命に嫌われている』など、
ここ数年間をちょっと思い出しただけで、なかなかの数の鬱ロックが出てくる。それこそ立ち止まって考えたら相当な数になりそう。
そしてそのどれもがかなりのヒット、要するに多くの人の共感を得ているわけで。
改めて、この状況ってどう捉えるべきなんでしょうか。
そんななか聞いた ano の音楽は、私が思っていた以上に懐かしく、不思議な既視感をもって鼓膜にどろりと流れてきたのでした。
Biography
ano(あの)は日本の歌手、女優、モデル。
2013年からガールズユニットゆるめるモ!に在籍していましたが、2019年に同グループを卒業。
2020年より ano 名義でソロ活動を開始し、2021年には I´sのヴォーカル/ギタリストとしても活動しています。
かわいらしく舌足らずな声とは裏腹に強力なパワーサウンド、刹那的で暴力的な歌詞が魅力。
♬ Peek a boo
多くの歌詞をano自身が手掛けていて、粘着的かつ疾走感のある視点が特徴的です。
この曲の作曲・編曲は井上拓(TAKU INOUE 名義)。
アニメやゲーム音楽の多くの作品に参加していて『アイドルマスターシンデレラガールズ』などが有名です。
anoとタッグを組むことも多く、この『Peek a boo』はじめ、いくつかの曲で作曲・編曲を担当しています。
インタビューや言動のぶっ飛び具合から、最近ではバラエティーでの活動も増えているようです。
鬱ロック、いつかダサく感じると思ってた
強烈な個性をもつ一方で、周囲と馴染めず不登校も経験をしているというanoちゃん。
その舌足らずでかわいらしい歌声から生まれる言葉には、まぁまぁ大人の筆者もあの頃、そして今の現状を振り返って引きずりこまれてしまいます。
答えがもう分かってる(と思いこんでいる)未来に、
自分がこれまで大切にしてきた色々を試したり、犠牲にしたり、分かち合ったりする必要が本当にあるんだろうか。
無気力とかやる気が起きないことに理由がないわけじゃないし、動ける人をちゃんと尊敬もしてる。
そしてこの現状が半分は自分のせいだっていうのも分かってる。
大人はみんな「まだ君たちが知らないことがあるから、いったんは(個人的にこれが罠)未来を信じろ」って言うし、言われたし、
でも大人になった今、私だって若い人たちにそう言えるコンディションでいたいっていうのも本当。
♬ アパシー
でも実際大人になってその中身をジャッジするなら、
確かに分かってなかったことが半分。
そして「やっぱりそうだったじゃん」っていうことが半分。
あの頃の無知は認めるけど、抱いてた直感はまぁ間違ってなかったという感じなんです。
あの頃、分かっていなかったことに価値を見出すか。
それとも、すでに分かっていたことに価値を見出すか。
このどちらに価値を見出すかで、鬱ロックを聞き続けるか否かの「大人」になってくるのかなぁ、ううーん。
鬱ロック。
大人になればいつかダサく感じると思ってたのに、予想以上にシンパシーを感じてしまった自分に、そして自身の青春時代からずっと変わらない諦念のぬるさに、
なんだか懐かしいようながっかりしたような、気の抜けた思いがしました。
ちなみに『アパシー』の作詞作曲はボカロPでも有名な柊キライさん。そしてイラストは漫画『東京喰種トーキョーグール』の石田スイさん。何がどうなってこんなコラボになったんだーーー(歓喜)!
でもこれだけ言えるのは、中二病だろうが病み系だろうが、他人から後ろ指さされるような生き方じゃ絶対ないってこと。
人生における「生産性」や「充実度」って均整のとれた軽やかな品があってとても美しい魅力がある。
一方、無法地帯の自分自身と長いこと本気で向き合うってのも、対外的には非生産的かもしれないけど、本人が使うスタミナはなかなかのもの。
自分のパワーを外に使うも内に使うも、両者本気ならどちらも尊重して頼り合える世の中だと、より自然だなって思う。
これはあの頃も今も変わらない気持ちです。
まずは職場の毅然とした態度から
「こんな私たちに誰がした!」
なんて言っていてもそれこそ意味がないので、大人になりきった今の私のポジションだから出来ることはあるのだろうか、と考えてみました。
例えば職場。
せめて筋が通ってないことには毅然とした態度で上司と接したり、曖昧な返答や笑顔を返さないとか、そういうことから気を付けたい。
きっと若い人たちが働くことに絶望する瞬間って、こういう「意味のないグレーゾーン」を目の当たりにしたとき。というか私がそうだった。
もちろん意味のある、思いやりで生まれたグレーゾーンは存在するし、そういうのはきっと若い人たちもすぐ理解できると思う。
働くのって基本ダルイわ。何も期待してないし。お金だけください。
って思ってる人が、せめてそれ以上遠くの世界に足を踏み出さないだけの姿は見せられる大人でありたいなぁ…
本当はそれさえもできるかあやしいけど、やれる人がやれる時にやらないとマジでこの停滞感は厳しい気がしてる。
♬ 絶対小悪魔コーデ
「真面目じゃないから容姿がヤンキー♪」ってなんかアイロニーの語感がいい歌詞だなって思った。「正直者はスーパーヒーロー」っていうのも聞かされる身としてはツライよねぇ。
♬ デリート
独白の「夢?別に見たくない。本っ当に嫌だ」の小さい「っ」に込められた気持ち、未だに分かる気がする自分もいてちょっと焦る。
実は聞き流そうと思っていた anoちゃん の音楽。
いつの間にかできた鬱ロックへの距離感に、無意識に気づいていたからかもしれません。
自発的に距離を置いていたわけではなかったけど、そういう部分も含めて、改めて自分があの頃思っていた大人に映っているかもしれないということを実感したり。
結局 anoちゃん の音楽を聞いて分かったことは、自分がそういう「中道」半端な人間になっていたということ。
そして、人生はキラキラのパワーだけでも生きていけないし、鬱のパワーだけでも生きていけない。
人間って本当に複雑怪奇な生き物なんだなということ、だったのでした。
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ここまでお読みいただきありがとうございました!
今後も色々な音楽を聞いてブログに書いていきたいと思いますので、お時間があるときにおつきあい頂けたら嬉しいです!
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