突然ですが皆さん、ミュージカルアニメと聞いて何を思い浮かべますか?
ディズニー映画を筆頭に、今ではアニメのなかでキャラクターが歌い踊る作品も多いですよね。
そんな中、わたしが声を大にしてオススメしたいミュージカルアニメが、1998年に公開された『プリンス・オブ・エジプト』。
絵が苦手なんて言ってる場合じゃないよ!今見ても映像クオリティーはすごいよ!
こちら、ストーリーも去ることながら何といっても……
音楽の質がすごい!
ダイナミックで荘厳で、「ミュージカル」としての掛け合いや音の絡み、空気の躍動感が凄まじいのです。
今回はこの『プリンス・オブ・エジプト』を彩る音楽について熱くおブログしていきたいと思います。
だいたいのストーリー
とはいっても作品の背景なしにミュージカル音楽は語れませんので、簡単にストーリー紹介を。
時は古代エジプト…
ラムセスの義兄弟として育った主人公が『モーセの十戒』を成し遂げるまでを描いた歴史スペクタクル
はい。以上、だいたいのストーリーでした。
けれど引っかかる部分がありますね…?
ラムセスの義兄弟
……!!!???
そうです。この歴史的トンデモ説といえる奇抜な設定こそ、この作品の肝。
エジプト王ラムセスとそれに虐げられていたイスラエルの民たちを導いたモーセ。
本来ならば敵対していた二人を一度「家族」にさせ、そこからの愛憎や葛藤、そして最終的な決別までを歴史的(神話的)背景に絡め描いているのが、この作品最大の特徴です。
※余談ですがわたしは無宗教者です。こちらの作品も宗教的側面はありつつ、ミュージカルアニメとして楽しめるようになっています。
プリンス・オブ・エジプト 代表曲
それではさっそく、とくにオススメの曲をストーリー順にご紹介。(完璧なネタバレ回避は難しいのでご注意を)
1.Deliver Us
オープニングを飾る壮大なナンバー。(ここでは途中から)
この曲にガツンときたならば、おそらくこの作品と相性いいはず…
「我らを救い給え」というタイトルの通り、エジプト王家に虐げられているイスラエルの民たちが魂の叫びをこの1曲にぶつけています。
なんといっても印象に残るのがラストもラスト、モーセの母親を演じ歌ったオフラ・ハザの「
バックではオケとコーラス隊が狂おしいほどの旋律を奏でるなか、ハザは巫女のようにそのフレーズを歌い上げます。
その響きは、ともすれば他の生々しい音からは浮世離れしているようにも聞こえます。美しすぎるし、ピュアすぎるし、イノセントすぎる。
けれどその表現がかえって、彼女の望む「救い」の対象が自ら手放した子、モーセに集約されていることが伝わります。
このたった数秒の衝撃が、わたしにとって大切な歌声の一つとなりました。
フルバージョンはこちら。
余談ですが、ラムセスの母親が実の息子ラムセスに「あなたの新しい弟よ」とモーセを名づけるシーンもトリハダ。
二人の対照的な立場の母親が描かれており、それはどちらも尊いのです。
2.Through Heaven's Eyes
挿入曲のなかでもかなり質が高い1曲。
いろいろあって自分の出自を知り苦しむモーセを、出会った遊牧民が励ますシーン。
歌詞のとおりすべては「神の目で」見なければわからないということですが、無宗教者のわたしたちからすると、「全体を見ろ」という意味合いでしょうか。
立場や環境などの一点だけで人や物事を見ずに、その奥にある本質を見るべきだ、というようなこと(…ざっくりですみません)を歌っています。
わたしがこの映画に惹かれる理由は、宗教映画の面をもっていながら普遍的なメッセ―ジをシンプルに伝えていることにあります。
歴史や宗教の解釈は時代ごとに変化するものです。(実際に、イスラエルの民は一方的に虐げられていたのではなく、賃金が発生する労働対象だったという歴史解釈もあります)
そのなかで、どの時代にも大切にされてきた教えや理…人間の芯になる部分に重きをおいているのがいいのです。
それにしても爺さん歌うますぎ説……
3.The Plagues
トラウマ注意。でも名曲。
ここから本格的に『モーセの十戒』にそったストーリーへ突入します。
その「本格さ」を表現したらとんでもないものになってしまったな…というのが、率直な感想。
曲が進み混沌と混乱とで圧倒されますが、とくに注目したいのが後半パート。義兄として決別したラムセスとの掛けあいのシーンです。
イスラエルの民を解放しろというモーセの訴えに、頑としてそれを許さない愛憎渦巻く「解放しない」という歌唱がすごい。単純にパワーとパワーのぶつかり合いです。
ーーー Let My People Go (解放しろ)
I Will Not Let Your People Go (解放させはしない)
この絡みでの「My」「Not」の落とし方、譜面的にはシンプルなんですがものすごく響きます。(ここでいう my/your はモーセに啓示を下ろした神としての所有格)
単語一つにもこんなに大がかりな舞台装置が存在するというのが、ミュージカルソングならでは。
重々しい二拍子のビート上に、音を滑らせたり転がせたりする曲作りも実に巧みです。
今は悲しいことに現在の状況とリンクしてしまい、なかなか向き合うのが難しい曲ですが、ミュージカルナンバーとして素晴らしい楽曲だと思っています。
5.When You Believe
プリンス・オブ・エジプトといえばこの曲。
注目したいのが、ラストを飾るテーマソングが主人公のモーセではなくモーセの姉、そして妻が歌うということ。
はっきりとした解説はありませんが、二人の母親にはじまり二人の女性で幕がとじていく。わたしはそこに製作者の意図があるような気がしてなりません。
信じれば 奇跡はおこる
人生で何度聞いたかわからない言葉。
それでも不思議と心を動かされるのは、やはりこの音楽の力が大きいのだと思います。
つぶやくような声がいつのまにかオーケストラとともに解放され大合唱になる様は、圧倒的で同時に沁みるものがあります。
そして、この曲の素晴らしさを世界へと発信したのが、テーマ曲を担当したマライア・キャリー、そしてホイットニー・ヒューストンの二人。
当時もすごいと思ったけど、今でもすごいコラボ……曲の冒頭は毎回トリハダです。(素晴らしいサムネ…)
この二人でその年のアカデミー歌曲賞も獲得しています。
この曲はアニメの枠を飛び越え、カバーソングとして今でも愛されています。
ロンドンにて舞台化。冒頭のオジサマは作詞作曲を手掛けたシュワルツ氏。
人気アカペラシンガーのピーター・ホーレンスがBYU・ボーカル・ポイントを迎えて。男声で聞く「
ペンタトニックスもマーレン・モリスをゲストに。
この曲を5人(6人)でやろうと思うなんて(いつものことだけど)異常だぜ……褒めてます。
ハンス・ジマーとステファン・シュワルツが織りなす最高級の音楽
これまで音楽を手放しに褒め称えてきましたが、それもそのはず。
この作品は映画音楽界では超ビッグネームのハンス・ジマーが音楽プロデュースに関わっているのです。
ハンス・ジマーの代表(中の代表)作
・レインマン(1988)
・ライオンキング(1994)
・グラディエーター(2000)
・パイレーツオブカリビアン シリーズ(2003)
・ダヴィンチコード シリーズ(2006)
やばすぎて笑う。
ほんとに世界中のほとんどの人が知っているだろう作品に関わっています。
こまかく書けばさらにやばーーーい数です。
とくに2000年以降の仕事ぶりは凄まじく、一時期「大作映画を見ればハンス・ジマーにあたる」みたいな現象になっていました。
近年とくに唸らされたのが『ダンケルク』。
ある音楽上の仕掛けがあり、解説を聞いたときは目から鱗でした。不思議な体験ができるので音楽面にもぜひ注目してみてください。
そして「
映画ではディズニーの『ポカホンタス』も手掛けています。
大ヒットのミュージカルナンバーを生み出す、その手腕たるやお見事です。
そんな壮大な音楽がちりばめられた『プリンス・オブ・エジプト』。
そのサウンドトラックは、映画音楽ファンならずとも必聴です。
- アーティスト:サントラ,ボーイズIIメン,シャーリー・シーザー,ジェシー・キャンベル,カーマン,ベス・ニールセン・チャップマン,クリスチャン,チャーリー・ダニエルズ,リンダ・デイヴィス
- 発売日: 1998/11/09
- メディア: CD
さいごに、ドリームワークス様へのお願い
いかがでしたか?
少しでもこの作品の魅力が伝われば嬉しいのですが同時に、今回はある一つのお願いで終わりたいと思います…
この作品はドリームワークス制作なんです。
スピルバーグ氏が長年あたためて実現したプロジェクトであり、かなり熱の入った堂々たる作品……
ですからお願いします、ドリームワークス様……
ボス・ベイビーもいいが、正統派アニメーションもまた作って!!
切実なお願いだ……
ディズニーも大好きだけど、ドリームワークスの仕事ぶりも大好きだったんだ……
まじでお願いします。未だにファンも多いのよ?