今年はよく【アルメニア】という国の名前を聞いた年でした。
ナゴルノ・カラバフ紛争は、改めて世界にアンテナを立てなければと感じたこともあり、自分にとっては今年聞いたなかで衝撃的なニュースだったし、レディ・ガガ「911」のPVもアルメニアの映画監督セルゲイ・パラジャーノ Sergei Parajanov の『The Colour of Pomegranates(ざくろの色)』に影響を受けて制作されたというのも話題になりました。
今回はそんなアルメニアを代表する女性歌手 Sirusho シルショについてご紹介したいと思います。
サウンドからビジュアルまですごく力を入れてる!国を代表するアーティストというのも頷けます。後半の真っ赤なジャンプスーツもお似合いです☆
アルメニアを代表する女性歌手シルショ
シルショはソ連時代のアルメニア・ソビエト社会主義共和国の首都イェレバン出身。
父は映画監督で母は歌手、そして両者ともにアルメニア名誉芸術家というまさにエリート芸術一家に生まれた彼女は自身で作曲もこなすシンガーソングライターです。
これまでに5枚のアルバムをリリースしています。
これまでに国内の音楽賞を何度も受賞していてユーロビジョン2008年では「QeleQele」にて決勝4位。
これを契機にヨーロッパでも人気となり、その後ギリシャポップス界のスーパースターであるサキス・ルーバスとも共演しています。
おすすめ曲
デビュー当初のシルショは、ある意味お決まりのユーロビートサウンド色が強かったのですが、近頃の彼女の音楽はアルメニアの伝統音楽を全面にだしたパワーサウンドが目立ち、国を代表するアーティストとして成長を続けています。
前述の「Zoma Zoma」のようにトラディショナルなサウンドと今っぽいサウンドのバランスに注力して作られている音楽が多く、複雑な地域に根差した彼らならではの絶妙なバランス感覚も感じられます。
シルショの代表曲にしてトラディショナルポップ傑作のひとつ。
一気にトラディショナルにふった、これぞアルメニアンサウンドという誇りに溢れた一曲です。
アルメニア織物のスキルと中東の伝統楽器(たぶんカーヌーン?)スキルの融合に目をつけたのがかっこいい!音がリフトしていくところと糸をほぐす様の映像は何度見ても鳥肌ものです!
私は織物や縫い物にはあまり興味がない人間なのですが、それでもアルメニア絨毯の歴史について小一時間調べてしまったほど、すべてが美しく見入ってしまう魅力があります。
民族衣装に身を包んだシルショもとにかく美しい~(アルメニアの方に美しいも何も今更ですが…)。
Sirusho - Der Zor (Official Video) | Սիրուշո - Դեր Զոր
トライブコーラスとミステリアスなサウンドでみせます。
最近のシルショは一曲のなかでアルメニア語と英語の両方を披露する曲がふえていますが、導入部分を英語で歌ってくれるとすぐに世界観に入れるのでありがたいですね。
Sirusho - Where were you | Սիրուշո - Կգա մի օր (Genocide)
1915年オスマン帝国によるアルメニア人虐殺の悲劇について訴える渾身の一曲。
作詞(英語)作曲、音楽・映像プロデューサー、コレオグラファーすべてに彼女の名前がクレジットされています。まるまる一曲が前半は英語、後半の別バージョンはアルメニア語で披露されていて、この曲にかけるシルショの情熱が伝わります。
例えどんな立場にいても(地理的に無関係だった日本人だったとてしても)
Where were you when my life was stolen
と言われるのはキツイことだし、胸に突き刺さる言葉です。
Sirusho - PreGomesh | Սիրուշո - ՊռեԳոմեշ
ユーロビート色が強いダンサンブルな曲ですが、サビ部分のコーラスやところどころで伝統楽器も取り入れており程よくトライブサウンドが感じられます。
数回聞くとヘビロテになる、ポップスとしてもバランスのとれた一曲です。
まとめ:音楽で世界の歴史が見えることもある
シルショの音楽は伝統や歴史に根差したパフォーマンスがとても素晴らしく、改めて芸術とそれを育んだ土地について考えるきっかけになりました。
例え入口がどんな形であっても、相手がどんな過去をもちどんなルーツの流れで今を生きているのか知るのはとても有意義なことですよね。
私が世界の音楽を聞いているのは、もちろんそのサウンドに魅了されたからではありますが、音楽で彼らの歴史や実際の思いを知りたいという理由もあります(これについてはまたの機会にしっかり一つの記事として書いていくつもりです)。
これからも音楽でわかることや感じたことで、世界の過去や現在、そしてできることなら未来について自分自身で考えて進んでいけるようになれたら…。
大袈裟かもしれないけど、そんなふうに思っています。