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MONO考えHITO感じる 世界の音楽紹介ブログ

【きっと心に沁みる曲】洋楽も歌詞重視!音楽と共感意識を考える

 

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安直なテーマかも…と迷ったのですが、こういう状況ですし、前回に引き続き心を動かすことは悪くないよな、と思いまとめてみました。 

 

実際いつ聞いても筆者が涙をこらえられない曲を選んでいます。

感性は人それぞれだというのは百も承知ですがとくに歌詞を重視した曲選んでいるので、フレーズや単語の使い方など、曲のどこかでキュッ…とくる部分があれば嬉しいなと思います。 

 

 

言葉が分からなくても知りたい気持ちがとめられない

 

今更ですが筆者は英語が得意なわけでも、語学に近い立場にもありません。

ただ、英語をはじめ「この歌手は何を伝えたがっているのか」「このワード選択にはどんな理由(背景)があるのか」ということについては我武者羅に知りたいと思っているので(サビの歌詞をヘビロテしている曲以外)意味を聞きとろうと何とか耳をそばだてているのが常です(このとき真顔&目が据わっているぐらい学生並に“リスニング”していると思う 笑)

当然イケイケでパリピな歌詞や「ここまで文化って違う?」と呆然としてしまうような歌詞もあったりするわけですが、その一方でまるで江戸時代の人情もののようなやるせない気持ちを訥々と語っているような曲諦念も美しいと思える気持ち)にも出会ったりします。

やはり個々の感性はお国柄だけでは測れないという当たり前のことにも気づかされたりするんです。

 

言葉の違いでスっと頭に入ってこなかったり、わざわざ調べるのは億劫…と敬遠する気持ちも分かるのですが、何気ない歌詞のフレーズが海の向こうの人もこんなことで落ち込むのか…と、思いがけない共感を生んだりするので、その人の感性を知りたいというエッセイを読むような感覚で、異国の歌詞を知ることにも意味はあるのかなぁと思っています。

 

今回はそんな共感した歌詞の一部分をとりあげつつ、それぞれの曲についてご紹介できればと思います。

非常に思い入れが強い曲ばかりで一曲について長く書いてしまっています。どうぞお時間あるときにでもおつきあいください。

 

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Luther Vandross - Dance With My Father

 

 

数ある感動的ファミリーソングのなかで、最も心に響き、その感動がずっと長続きしている、とても筆者と相性がいい曲です。

 

Luther Vandross ルーサー・ヴァンドロスアメリカのR&B(ブラックコンテンポラリー)を主軸に活動したシンガーソングライター。

ダイアナ・ロスなど有名歌手のバックシンガーを経たあと、1980年~2000年代に活躍。

代表曲は『Never Too Much』『Endless Love(マライアとのデュエット)』など。2005年にお亡くなりになっています。

タイトル曲を冠するアルバム『Dance With My Father』(2003)は自身初の初登場1位を記録。残念ですがこのアルバムが最後のオリジナル作品となりました。

 

何といってもこの歌詞がね…

何気なく飾り気なく、淡々と父親との思い出を語っているのですが、その情景描写の温度感がすごい。

私はベッドにお金を隠されて励まされたことも父親と特にダンスしたこともないけれど、歌詞で歌われている情景がありありと伝わってきて、経験したことのないこれらのエピソードに共感し涙してしまいます。

PVのなかではセリーヌファミリーが映されていますが、おそらくこのアルバムで参加したご縁でのことでしょう。 

 

セリーヌはこの曲をカバーしていました。


DANCE WITH MY FATHER by Celine Dion - Father's Day

映像よりセリーヌの歌声だけで想像した方が、より豊かに歌詞の情景をイメージできると思います

 

実をいうとこの曲を初めて聞いたのはこちらのセリーヌバージョンでした。

このバージョン一番の肝は何と言っても大サビ前の場面転換です。

 

Sometimes I'dlisten outside her door

And I'd hear how mama would cry for him

I'd pray for her even more than me

I'd pray for her even more than me 

 

一気に視点が変わり、なぜ主人公が父との思い出を語っていたのか本当の理由が明かされます。

これに気づいたとき、わたしはやられました。

直後にくる「お願いしすぎだと分かっているけど…」「こんなこと簡単に叶えてくれないって知っているけど…」

という無垢で健気な歌詞もたまらなくて、記事を書いている今でも目頭が熱くなっていたり。

オリジナルの木漏れ日のようなバージョンより、子ども特有の激情に似た感情が表れていて、セリーヌのストロングヴォイスを活かしたカバーだと思います

おそらく子どものときにこれを聞いても、ここで私はやられただろうな…。

 

この曲が歌っていることは確かにつらく悲しいことだけれど、世の中はこういう思いができる家族ばかりではないので、少しでも切なくも温かい思いに溢れた家族の形が増えればいいな、と曲を聞く度に思ったりします。

 

Céline Dion - How Does A Moment Last Forever

 

 

実はかなりセリーヌに泣かされてるという事実に、自分でも驚いています。

これも音楽のおもしろいところなんですけど、私にとって彼女は特別好きでも思い入れのある歌手でもないです。それでも記憶や感性に影響を与えるというのが、音楽や歌のすごいところだなぁ…って素直に思います。

 

映画『美女と野獣』挿入曲。作曲はディズニー音楽の生ける伝説アラン・メンケン

ここ最近聞いたなかで最も感動し、柄にもなく「愛」について色々な思いが駆けめぐった曲です。 

映画を見て感じたこの曲の感想はこちらでお話しています。 

 

恒久的な愛を歌える(そしてそれが説教臭くも胡散臭くもない)歌手って本当に数少ないと思うんですが、セリーヌの歌唱はまさにそれ。

全体から見ると抽象的なようでいて、中身は明瞭な意味の言葉を連ねる、まるで物語や普遍的な詩を歌うことに長けている歌手だと思います。

 

How does a moment last forever?

How can a story never die?

 

この曲の歌詞もまるで哲学のようなメッセージが続くのですが、セリーヌの歌声から小難しさは一切感じられません

とくに私が注目したのは、印象的に歌われるこちらの歌詞。

 

Minutes turn to hours, days to years then gone

But When all else has been forgotten

Still our song lives on

 

これ、私が思う【音楽と歴史の関係】にドンピシャのフレーズ

例え目で見えなくても耳に聞えなくても、その人たちが生きた証というのは子どもの癖に、孫の好みに、愛した書籍に、苦手だった味付けに、いつの間にか伝わっているものだと思います。

それが濃くなったり薄くなったりを繰り返しながら一つの地域の慣習となり、大きな文化となり、後世の私たちに伝わる。

それならば、その逆をたどる作業も決して難しいことではないはずです。

それが出来れば、私たちは過去にもっと多くのことを学べるのではないか、とこの曲を聞きながらあれこれ思ってしまいます。 

 

Brad Paisley - Whiskey Lullaby ft. Alison Krauss 

 

 

昔からいっちょ前にカントリーで涙を流せるような大人になりたいという、背伸びしまくりの考えがありました。

でも実際にこの曲で目頭が熱くなったとき真っ先に思ったのはこれまで自分の痛みも他人の痛みもたくさん目にしてきたなぁ…という予想外の気持ちでした。

漠然と、大人になったら多くのことに共感できるようになるから涙を流すのだとばかり思っていたのですが。

 

名実ともにカントリー界のスーパースターとなったブラッド・ペイズリーと、その唯一無二の歌声が印象的なカントリー歌手アリソン・クラウスのデュエット曲。

2004年発売のブラッドのアルバム『Mud on the Tires』収録。ビルボードチャート41位。またビルボードカントリーチャートでは3位を記録しています。 

Mud On the Tires

Mud On the Tires

  • ブラッド・ペイズリー
  • カントリー
  • ¥1833

アリソンの声についてはこちらでも書いています。 

タイトル通りアルコールをテーマにしたカントリーバラード。

歌詞の内容も映像のとおりですが、わたしにはこの二人の個人の痛みと同じぐらい、アメリカという国の痛みが映し出されているような気がしてなりませんでした。 

戦争。銃。酒。

もちろん違った見方もできますが、どれもアメリカをアメリカたらしめているファクターであり、そのすべてが負のトライアングルになりうる現実の問題でもあるからです

戦争に出兵しなければ…

銃が一般家庭になければ…

アルコールに依存しなければ…

 

そして、映像の素晴らしさも去ることながら、私がいつも涙をとめられなくなるのがpillow(枕)willow(柳)の、ため息をつくような美しい韻ふみです。 

 

They found him  with his face down in the pillow

When we buried him beneath the willow

 

They found her with her face down in the pillow

They laid her next to him beneath the willow

 

どちらも「安らかな眠り」を彷彿とさせ、その次の瞬間にタイトルの「Whiskey Lullaby」が聞こえてくる。

誰にだって理由があるとは言いますが、聴くたびに自分の痛みや他人の痛みに敏感にあれるよう、そしてそれが大きすぎる傷で逆に見えづらかったとしても、見つめる努力をしていきたいと思わせてくれる曲です。

 

小さな視点から大きな視点へ 音楽がもつ共感力

 

最後にご紹介する曲は、今だからこそ文字で書きとめたいと思った曲。

今を生きている以上「他人事」として聞くのは不可能で、この曲だけは涙を流す理由も、その質もまったく違います

 

MISIA - さよならも言わないままで 



白状すると、これまでMISIAが歌ってきた「ドラマ主題歌」的な曲には注目してきませんでした。

もちろんそれらはMISIAが本気で闘い完成した曲たちだと思うのですが、ときには「感動を演出している」ように思えてしまったこともあった。

けれど、それは私の耳が未熟だったからだと今では思います。

なぜならこの曲とMISIAが歌い続けてきた曲に決定的な違いはないから。

 

一度コロナのことを忘れて、新しい悲劇(悲恋)ドラマにこの曲が起用されたとしましょう。

そのとき、普段の生活で聞こえてきたこの曲に私は耳を傾けただろうか。この曲について考えてみようと思っただろうか。

……何度想像してみても、答えは「NO」なのです。

 

その事実を猛省すると同時に

音楽(芸術)は自分の経験を通してそのメッセージを色濃くなるし、音楽(芸術)は聞いた個人の経験を受けてさらに輝く

ということを痛感しました。まさに鏡に反射する光のようです。

 

そう考えると音楽や芸術が放つ共感のパワーというものは本当に不思議なものだなと思います

Dance With My Father」のように歌詞の体験をしていなくても共感するし、まったく同じ環境にいてもそれ以上の共感意識をもったりする

だとしたら感動や共感って一体何なのでしょうか。

 

私にはやっぱり、寄り添うことである以外、今は思いつきません。

この曲のように、例え解決策を見出せずとも寄り添うことだけを目的にした感情こそが、音楽のもつ共感力なのではないでしょうか。

 

コロナ禍の今、こんなにも大規模で長期間にわたる【共感意識】を人々がもったのは、おそらく長い歴史のなかで今回が初めての経験だと思います(苛酷さとは別に「共感」という観点では戦中をも超えたと思う)。

そんな中、ごく小さな視点でも、聞き手の意識一つでそれはどんどん広く深くなり、いつの間にか大きな視点へ、そして色々な事象に寄り添える視点となって「共感」の力になる

受け入れることが共感なのではなく、自らの体験や価値観をもとに「視点を広げよう」と意識を育んでくれるのが、音楽や芸術のもつ不思議な力なのかもしれません。

 

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また長々とした記事に…。

ただ、今回は歌詞の意味を広く考えられるような曲について書いてみたかったので、自然と長文になってしまいました。

ここまでお読み頂いた方、本当にありがとうございました。「こんな沁みる曲あるよ!」というものがあれば是非教えてください^^